国内初の拠点型PCB汚染土壌処理施設稼働開始

ジオスチーム法による

土木本部 統括部
西村良平

はじめに

全国各地でPCBなどによる土壌汚染が顕在化していますが、国内にこれらの汚染土壌を処理できる施設がなく、安全で浄化性能が優れた処理施設が求められていました。このような情勢の中で(株)テルムは、PCBによる汚染土壌を浄化する国内初の拠点型汚染土壌浄化施設を北九州市に建設し、7月末に操業を開始 しました。当社は(株)東芝とともに汚染土壌浄化の技術支援で参加します。この施設により汚染土壌を再生し、安心して暮らせる環境を保全できるように積極的に取り組みます。

PCB汚染土壌処理施設の概要

本施設の処理対象物は、PCB、ダイオキシン類、残留農薬による汚染土壌で、恒常的に稼動する拠点型のPCB汚染土壌の処理施設としては、全国初の稼動となります。処理の規模は1日約7.2トン、年間処理量約1,700トンを予定しています。
本施設は土壌中の水分を利用して、PCBなどの汚染物を分解する安全で浄化性能の優れたジオスチーム法を採用しています。本施設の運営は東芝の100%子会社であるテルムが行い、東芝および当社が装置の運転管理面などを技術支援します。また、事業実施に伴い3月26日に北九州市と環境保全協定を締結しました。
本施設の無害化設備は、環境省や国土交通省の実証実験を通じて安全性と浄化性能が確認されたシステムを用います。

名称 株式会社テルム 土壌浄化センター
所在地 北九州市若松区響町1丁目62番-1
敷地面積 約8,000m2
処理対象物 PCB、ダイオキシン類、残留農薬による汚染土壌

ジオスチームの技術概要

ジオスチーム法は、土壌を加熱し汚染物を蒸発させる方式(間接熱脱着法)により土壌からPCB等の汚染物を除去する工程と、土壌から蒸発させた汚染物質を水蒸気で分解する方法(水蒸気分解法)により無害化する工程の二つの工程で構成されています。ジオスチーム法は環境省や国土交通省の技術評価を受けながら、安全性と優れた浄化性能を重視して開発した技術で、汚染物の除去から分解までを一連のシステム内で行うため、装置外へ汚染物を排出しません。また、溶剤や薬品を用いないため、有害物や危険物等を取り扱う必要がありません。本技術で浄化された土壌は、土木原料やセメント原料等としてリサイクルを計画しています。

ジオスチーム法の実用化までの経緯

ジオスチーム法は2001年に東芝で開発した技術であり、2004年から当社の間接熱脱着法と組み合わせ、テルムと共に実用化に取り組んできました。3社は、2005年11月より北九州エコタウン実証研究エリア内でジオスチーム法を用いたPCB汚染土壌浄化の実証試験を行ってきました。このうち、環境省 「平成17年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査およびダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」においては、PCB汚染土壌を対象として分解率や除去率などの浄化性能、安全性、周辺環境への負荷などについて検証しました。その結果、高い分解率が得られ、環境排出※1も抑制できており、評価された6技術のうち唯一実用レベルで使用が可能であると評価されました。また、国土交通省「鶴見川多目的遊水地土壌無害化処理実験」では、PCB等を含む異物混入土について実証試験を行いました。

(参考:評価結果URL)

「環境省平成17年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査およびダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8090

おわりに

当社は、和歌山県橋本市でジオメルト法によりダイオキシン類汚染土壌約1,000トンを現地無害化処理(ET333号参照)し、大阪府能勢町で間接熱脱着法+ジオメルト法によりダイオキシン類汚染土壌約11,000トンを現地無害化処理(ET431号参照)しました。今般操業を開始した本施設は、ジオスチーム法でPCB・ダイオキシン類等汚染土壌をオフサイトで浄化するものです。今後、この施設で培ったノウハウを活かし、全国各地に存在する大量のPCB・ダイオキシン類等汚染土壌を保有するサイトに対して、ジオスチーム法による現地無害化処理を積極的に技術提案していきたいと考えています。

※1 環境排出:温室効果ガスや有毒物質が大気中や水中に排出すること。ここでは、排ガス中のダイオキシン類、PCB、二酸化炭素濃度および浄化土壌中のダイオキシン類、PCB濃度が評価対象

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、管理本部 広報までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。



434号(2007年09月01日)