コンクリート構造物の強度回復工法

保有技術の紹介

コンクリート構造物のリニューアル技術

強度回復工法とは

コンクリート構造物の劣化要因のひとつであるアルカリ骨材反応(ASR)は、その膨張作用により構造物にひび割れを発生させたり、さらには鉄筋破断を生じさせるなどの損傷を与えます。また、ASRによる微細なひび割れの進行により、コンクリートの強度や静弾性係数が低下することが知られています。当社は、これまでASRを有する構造物に対し、その膨張を大幅に抑制することが可能な「ASRリチウム工法」を開発し、多数の構造物を補修してきました (ET337、424号参照)。しかし、この技術はASRの進行速度を抑制することを目的とし、低下したコンクリート強度や静弾性係数を回復させることは困難でした。そこで、微細なひび割れが原因で強度が低下したコンクリート構造物に対し、コンクリート強度および弾性係数を回復(向上)する効果のある薬剤 (強度回復剤)を、構造物に削孔した小径の圧入孔より加圧注入し、強度回復剤を浸透、含浸させることにより、低下したコンクリート強度の回復を図る工法を開発しました。

強度回復剤と実験結果

本工法に使用する強度回復剤は、ケイ酸塩を主成分とする水溶液で、液中のシリカ分(SiO2)が、 コンクリート中の水酸化カルシウムと結合しケイ酸カルシウムを生成します。ひび割れ内に浸透した強度回復剤がこのように反応することでひび割れが充填され たりひび割れ近傍の組織が緻密化され、強度および弾性係数が回復(向上)します。グラフは健全なコンクリート供試体(緑色)、繰り返し載荷により強度や静 弾性係数を低下させた供試体(水色)、およびそれに強度回復剤を加圧含浸させた供試体(赤色)に対して、強度試験を行った結果です。劣化したコンクリートに強度回復剤を含浸したことにより、劣化する前の健全なコンクリートの強度および弾性係数の状態近くまで回復していることが確認できました。
* 本工法は、(株)日板研究所と(株)IDT日板との3社共同開発です。

(問い合わせ先)

大阪本店 土木技術部 為石 昌宏 

TEL.06(6244)3617 / E-mail:tameishi_mh@konoike.co.jp

 

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431号(2007年06月01日)