施設を使用しながらの学校耐震改修

京都大学(北部)総合研究棟

大阪本店 工事事務所 寺園徳成
/ 西岡 政則

はじめに

京都大学(北部)総合研究棟改修(農学部総合館)施設整備等事業は京都市左京区の京都大学の北部に位置し、構内は銀杏並木等がある地域住民に開放された緑豊かなキャンパス内での「ながら改修」工事です。
本事業は農学部総合館の耐震補強改修を行い、建物の耐震性能の向上を図り、今後長期にわたり建物の寿命を延ばすと共に大規模な地震に対する、学生・教職員 の安全確保および教育研究環境の基盤整備を図ることを目的としています。本号ではその概要を紹介します(写真-1)。

 

長期「ながら改修」とは

延床約40,000m2の建物を一度に改修しようとした場合、今回の改修内容からすると工期は約2年と想定されますが、研究施設としての移転場所の確保が困難であることから施設内での研究をしながらの改修「ながら改修」が生じました。
大学のニーズに応えるため、6工区に分割(図-1)して計画が進められました。ひとつの工区についての工程の概要は、1カ月半で解体工事、1カ月半で躯体工事、2カ月で仕上・外構工事、残り1カ月で検査という流れになります。全体(1~6工区)としては、6カ月の改修工事期間、1カ月の大学引越し期間、それが6回行われ、42カ月の長期工事となります。

施工条件

本事業では、学生・教職員の安全および研究施設の環境維持を最優先としました。

安全:大学側(研究施設としての使用エリア)の非常時の避難経路確保。
避難経路は仮設の鉄骨階段を設置し、2方向避難ができるようにしました(写真-2)。また、工事エリアに火災報知器を取り付け、万一の際に備えました。

環境:環境維持としては、騒音・振動・埃・異臭の軽減。
既存RC壁を耐力壁に補強・階段・EVシャフトの再利用・外壁面の鉄骨耐震ブレース設置による補強・カバー工法によるアルミサッシの改修・屋上シンダーコ ンクリートを残してのシート防水等、既設の積極的利用による騒音等の軽減を図り環境に配慮しました。

おわりに

本現場での改修工事は、在来工法による工事が主ですが、「ながら改修」となれば、施設使用者の引越しが工期に含まれることから、必ず複数回の工事を繰り返すことになります。その繰り返しの中でさまざまな問題を抽出・改善して進化させることが必要とされます。
また、計画・工法では解決できないことも「ながら改修」の中には多くあり、発注者とのコミュニケーションを大切にすることも必要です。人とのコミュニケーションの構築、日常のPDCAの確立が、この現場、長期「ながら改修」において最も重視すべき技術です。

工事概要
工事名称 京都大学(北部)総合研究棟改修(農学部総合館)施設整備等事業
工事場所 京都市左京区北白川追分町京都大学北部構内
事業主 吉田施設整備SPC(株)(国立大学法人 京都大学)
設計・監理 (株)大建設計、(株)新日本設備計画
施工 鴻池組・淺沼組・新菱冷熱工業・きんでん共同企業体
工期 平成17年10月~平成21年2月
構造・規模

RC(一部SRC)、塔屋1階 地上5階 地下1階

建築面積 7,747.30m2、延床面積 40,215.01m2

建物高さ 最高部高:23.92m、階高:B1階4.0m、

1階3.6m、2~5階3.35m、基礎深さ4.55m

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436号(2007年11月01日)