河川での真空圧密工法(高真空N&H工法)

高岡川地盤改良工事

東京本店 工事事務所
新井冠作

はじめに

平成20年度高岡川地盤改良工事は、現場の上流に位置する「つくばエクスプレス・みどりの駅」周辺の宅地開発に伴う雨水流出量の増大に対処するため、一級河川高岡川の河川改修を行うもので、厚さ3~8mで堆積する腐植土主体の軟弱地盤を真空圧密工法(高真空N&H工法)で改良し、その後、築堤工(堤体盛 土、河道掘削)を行うものです。本号では、高真空N&H工法の施工について紹介します。

高真空N&H工法の概要

本工法は以下の手順により、圧密沈下を早め、短期間に地盤を改良する工法です(図-1)。

  1. 軟弱地盤の地表面から鉛直ドレーンを打設し、その頭部と水平ドレーンを連結して有孔集水管を敷設する。
  2. 水と空気を分離するための気水分離タンクを埋設後に改良範囲全体を気密シートで覆う。
  3. 真空駆動装置で気密シートの下に真空圧を作用させ、鉛直・水平ドレーン、有孔集水管、気水分離タンクを介して地中の水と空気を軟弱地盤から強制的に排出する。

施工概要

当現場における高真空N&H工法による地盤改良は、全延長539m、幅31~37m、面積17,263m2を対象として、1ブロックあたりの改良面積を3,000m2以下とし、6ブロックに分割して施工しました。
その施工は以下の手順で行いました(写真-1~3)。

1. 事前調査工
電気式三成分コーン貫入試験により1ブロックあたり6カ所、改良対象層厚を調査→結果を用いて鉛直ドレーン打設長の見直しを実施。

2. 現況河川埋め戻し工
改良範囲を水平にするために現況河川を埋め戻し。

3. 高真空N&H工法による地盤改良工
サンドマット(t=0.5m)敷設(購入土)→鉛直ドレーン打設(@1.0m)→水平ドレーン・有孔集水管・送水管の敷設、気水分離タンクの設置→気密シート・保護シートの敷設→真空駆動装置の稼働(60日間稼働)→改良効果確認土質調査

4. 築堤工
堤体盛土→河道掘削

真空運転停止時期の判断

特記仕様書では、真空運転停止時期の判断基準は「平均真空圧70kN/m2以上で圧密度90%以上」と示されています。このため中間試験として、目標日数の80%程度の日に不撹乱試料を採取し、土の含水比試験・粒土試験・密度試験・一軸圧縮強度試験などを行い、土の性状を把握して、以後の運転日数などを予測しました。
地盤改良の目的は堤体の安定であることから、改良効果確認の土質調査で求めた改良後地盤の粘着力を用いた円弧すべり計算により、安定性の確認を行いました。
真空運転停止段階での不撹乱試料で得られた圧密状況および円弧すべり計算結果の例を表-1に示します。本事例では、円弧すべりに対する安全率が1.2より大きいため、運転停止可能と判断しました。

河川内での高真空N&H工法適用の留意点

所定の真空圧を確保するため、以下の点に留意する必要があります。

  1. 対象地盤内の流木や土留め松杭など、上流から流出してきた不純物の撤去が必要。
  2. 一部旧水田地帯での改良となるため、水田内の暗渠配管、籾殻、畦シートなどの撤去が必要。
  3. 気密シートの溶着作業は埃や水分を避ける必要があるため、改良側部に設置した工事用道路からの粉塵飛散や天候に注意が必要。

 

おわりに

高真空N&H工法の施工は平成21年7月20日に全ブロックの運転が完了し、平成21年11月に無事竣工しました。本報告が今後の類似工事への参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称 平成20年度高岡川地盤改良工事
工事場所 茨城県つくば市高岡地内
発注 (独)都市再生機構 茨城地域支社
設計・監理

(独)都市再生機構 つくば開発事務所

(株)URリンケージ つくば事務所

施工 (株)鴻池組
工期 平成20年9月25日~平成21年12月4日
工事内容

河川土工事/

掘削土砂 : 60,800m3、サンドマット : 8,970m3
盛り土工 : 65,150m3、法面整形 : 9,890m2

 

真空圧密工/

サンドマット敷設 : 24,702m3、鉛直ドレーン : 64,270m
気密シート : 20,599m2、運転工 : 一式

 

構造物撤去工/

一式

 

農業用水管工/

撤去復旧 : 一式、暗渠切り回し : 1,500m
暗渠排水 : 一式

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456号(2010年01月01日)