大豆ホエーを用いたバイオレメディエーションによる汚染土壌の浄化
-揮発性有機化合物および油汚染土壌に対する有効性の評価-
2018年06月22日 リリース[環境関連技術]
株式会社鴻池組(本社 大阪市、代表取締役社長 蔦田守弘)と不二製油株式会社(本社 大阪府泉佐野市、代表取締役社長 大森達司)の2社は、このたび土壌汚染対策の分野において、バイオレメディエーションに用いる薬剤のコスト低減を目的として、食品産業のプロセス上に副生される大豆ホエーによる資源循環型のバイオレメディエーション技術を開発しました。室内及び現場実証試験にて、揮発性有機化合物による汚染地下水に対して大豆ホエーを供給した結果、バイオレメディエーション用の浄化促進剤としての有効性を確認しました。
■ 大豆ホエーの特長
そこで、大豆ホエーについて検証を重ねた結果、天然由来成分による浄化促進剤という新たな利用方法を見出すに至りました。
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図1 大豆ホエーの外観 |
■ 大豆ホエーの適用イメージ
実際の適用方法は、汚染サイトに設置した井戸から大豆ホエーを注入し、微生物を活性化させて分解を促す原位置浄化法が主要なものとなります(図2)。また、原位置浄化法以外にも、掘削した汚染土壌を地上で大豆ホエーを添加・撹拌するランドファーミング法への適用も有効です(図3)。
図2 原位置浄化法の概念図 |
図3 ランドファーミングの概念図 |
■ 室内試験の結果
VOCに対する浄化効果を把握するために、模擬汚染地下水に大豆ホエーを添加するバッチ試験を行いました。処理前に7 mg/Lあったテトラクロロエチレン(PCE)は、約20日後には環境基準値(以降、基準値)(0.01 mg/L)以下まで低減できました。その分解過程で発生するトリクロロエチレン(TCE)、シス-1,2-ジクロロエチレン(cis-1,2-DCE)および塩化ビニル(VC)についても、一時的には濃度が上昇するものの、全て基準値以下まで分解処理することができました。これに対し大豆ホエーを添加していないケースではVOCに顕著な減少は認められませんでした。その結果、PCE等のVOCに対する大豆ホエーによる浄化促進効果を確認することができました(図4)。
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■ 現場実証試験の結果
実施工のスケールにおける適用効果を確認するために、鋼矢板で締め切ったVOCによる地下水汚染エリアに対して、大豆ホエーを注入する現場実証試験を実施しました。処理前に2 mg/Lであったcis-1,2-DCEが6ヶ月後に分解生成物質のVCを含めて基準値以下まで低減されました(図5)。この現象は、最終的な生成物質であるエチレンの出現とVOCの分解に関与する遺伝子の発現の裏付けを伴っていたため、嫌気性微生物による分解促進と評価することができました。
図5 現場実証試験におけるVOCの分析実験 |
本検証によって、食品産業のプロセス上に副生される大豆ホエーは、土壌汚染対策の分野における資源循環型バイオレメディエーションの浄化促進剤として活用可能であることが評価できました。今後は、商品化に向けた検討を進めていきたいと考えています。
以 上