生物多様性簡易評価ツール「いきものプラス®」を
バージョンアップ
-対象地域を大都市圏に拡大-

2016年02月17日  リリース[環境関連技術]

株式会社鴻池組は、株式会社淺沼組、株式会社安藤・間、、西武建設株式会社、株式会社錢高組、東亜建設工業株式会社、西松建設株式会社、三井住友建設株式会社と共同して、建築物の緑化計画において生物多様性への取り組みを評価するツール「いきものプラス®」をバージョンアップして機能を強化しました。


「いきものプラス®」は、設計者が敷地情報や取り組み内容をパソコン上で入力することにより、CASBEE注(1)の新築(簡易版)における生物多様性に関連した項目の点数を算出し、緑化計画立案を支援するツールで、2014年2月に上記8社が共同開発しました。
本ツールは、CASBEEに準じた評価機能と付加機能から構成されており、付加機能として、計画地の潜在自然植生の情報に基づく「推奨植栽植物種」とそれに誘引される動物(鳥類、蝶類)の代表的な種を確認できます。
今回のバージョンアップでは、これまで東京23区に限定されていた利用対象地域を、1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)と大阪府・愛知県に拡大して、利便性を高めました。また、市街地のほか郊外周辺もカバーすることで、法面緑化など土木の植栽計画にも利用できるようにしました。
さらに、これまでは8社が外部サーバを共有してツールを運用していましたが、今回のバージョンアップを機に、会社ごとのサーバで運用する体制に改め、今後は各社が独自で改良等を行えるようにしました。

「いきものプラス®」の適用案件は年々増加しており、集合住宅や事務所・宿泊施設・病院・廃棄物処理場等の緑化計画の提案や設計に活用しています。お客様から高い評価を受けて、集合住宅のパンフレットで本ツールが紹介された事例もあります。
本ツールの概要は、2014年9月の日本建築学会大会や、2015年10月の世界屋上緑化会議 名古屋大会(主催: World Green Infrastructure Network注(2))で発表を行い、多くの関係者から高い関心を集めました。

「いきものプラス®」開発8社では、適用実績等の情報を共有して連携を図るため、2014年8月に「いきものプラス連絡会」を設立し、継続的な協力関係を構築しています。8社は今後、各社独自の改良を加えながら本ツールを積極的に活用し、よりいっそう生物多様性に配慮した設計・施工を進めてまいります。

 

注(1) CASBEE:2001年に国土交通省が主導し、一般財団法人建築環境・省エネルギー機構内に設置された委員会によって開発された、建築環境総合性能評価システム。
注(2) World Green Infrastructure Network:通称WGIN。屋上緑化および関連技術に関する研究交流組織。理事は23の国と地域のメンバーから成る。2008年設立。本部はカナダ・トロント。


以   上

 

<参考>

[本ツールの概要]
評価機能と付加機能から構成されており、CASBEE新築(簡易版)における建築物の環境品質(Q)、建築物の環境負荷低減性(LR)それぞれの生物多様性に関する評価項目の一部を対象としています(図-1)。

[評価機能]
評価機能では、以下の通り設計案の評価を行います。
1) 設計案評価システムをクリックし、原設計案または設計イメージに沿って数値を入力し、かつ取組み内容を選択します(図-2、図-3)。
2) CASBEE対応型評価点といきものプラス評価点(独自評価)の2 種類で点数が出ます(図-4)。CASBEE対応型評価点は、CASBEEの評価基準に合わせて点数評価したものです。一方、いきものプラス評価点は、生物多様性に関する独自の観点からCASBEE対応型評価点とは異なる基準で点数評価したものです。
3) 上記に基づき、原設計案より高い評価となる設計変更案が表示されますので、設計者は原設計案と設計変更案の内容を比較検討することができます。

[付加機能]
付加機能として、以下のメニューを用意しています。
1) 敷地や建物への推奨緑化面積が表示されます(図-5)。
2) 計画地の潜在自然植生の情報に基づく「推奨植栽植物種」が確認できます(図-6)。
3) 植物種とそれに誘引される動物(鳥類、蝶類)の代表的な種との連関図が表示され、生物間のネットワークが確認できます(図-7)。
4) 計画地に誘致できる可能性のある鳥類の代表的な種(誘致種)が表示できます(図-8)。