全断面追尾式穿孔誘導システム搭載最新ジャンボを
長距離新幹線トンネルに導入
-余掘り低減と高速安全施工を目指して-

2014年07月16日  リリース[トンネル・シールド]

株式会社鴻池組(本社 大阪市、代表取締役社長 蔦田守弘)は、発破工法を採用する山岳トンネルにおける切羽穿孔の精度を向上させ、余掘りの低減と高速安全施工を可能とする「全断面追尾式穿孔誘導システム」を搭載した3ブーム・ジャンボ(写真-1)を、鉄道建設・運輸施設整備支援機構九州新幹線建設局発注の「九州新幹線(西九州)、新長崎トンネル(東)他(L=3870m)」に導入しました。 

● 背景
発破工法では、余掘りを避けることが困難であり、これによりコストと施工サイクルのロスが発生することや、地山が損傷することなどが課題となっています。
高速施工を目的として長孔発破を行う場合には、芯抜きをはじめとする各穿孔の精度が重要であり、精度が低い場合には想定した掘進を行えなくなることや余掘りが非常に大きくなることが課題となっています。
また、最近のトンネル現場では、切羽前方の地質を坑内から探査して事前に把握することが、工事を安全かつ手戻り無く進めていく上で重要となっています。 

● 概要
 「全断面追尾式穿孔誘導システム」は、株式会社鴻池組、古河ロックドリル株式会社(本社 東京都中央区、 社長 三村清仁)およびマック株式会社(本社 千葉県市川市、社長 宮原宏史)が共同開発した「自動追尾式余掘り低減システム」を、同三社でさらなる高度化を図った技術です。 

(1)全断面追尾式穿孔誘導
「自動追尾式余掘り低減システム」は掘削面に沿った周辺孔など、ジャンボのガイドシェル後端に設置した測量用ミラーを視認できる範囲でのみ適用可能でした。新たに開発したシステムではジャンボに各種センサーを追加することで、「余掘り低減システム」と同様の測量システムのままで、芯抜きをはじめとする全断面について、穿孔を誘導することが可能となりました(写真-2、3)。切羽のどの位置についても、穿孔オペレータに操作盤に設置した画面上でわかりやすくガイダンスすることで、穿孔精度向上を図ることができます(写真-4、5)。  

 

 

 

(2)穿孔検層
本ジャンボに装備した3つのブーム全てに、穿孔探査機能を搭載しています。日々の穿孔のたびに切羽前方やトンネル周辺の地山状況を確認することができます(写真-6)。


地山性状は穿孔エネルギーの推定値を元に判断します。本システムでは打撃回数をカウントすることができるため、穿孔エネルギーの推定精度が向上し、これに伴い、地山性状の予測精度も向上します。
また、定期的に実施する長尺の前方探査用に、専用の操作盤兼表示盤を装備しています(写真-7、8)。データを確認しながら探査することで、探査データの精度向上と、探査時間のロス低減を図ることができます(写真-9)。各ブームに搭載している削岩機の能力は170kg超級クラス国内最大であり、30mの探査を1時間以内で行えます。  

 

(3)データ収集・分析
3つのブーム全ての、穿孔位置、穿孔速度、穿孔時の各種油圧データ等の穿孔データは、ジャンボ本体だけでなく、坑内無線LANを通して、事務所のパソコン、モバイルパソコンおよびスマートフォンで共有でき、リアルタイムで確認することができます。これにより、適切な支保や補助工法の選定、および次の切羽における発破パターンを迅速に検討・実施することができ、トンネルの安定性確保、安全施工、および品質向上を実現できます。 

 

● 今後の展望
本トンネルでは、土被りが小さく発破振動を抑制する必要のある区間、地山が悪く掘削時に地山の損傷を極力抑制する必要のある区間、および硬質な岩盤で進行を上げる必要のある区間があります。鴻池組は、それら全ての区間で、本システムを活用することで、工期内での無災害竣工を目指します。
併せて、今後の掘削の過程で、本システムのさらなる高度化を図る予定です。