「春秋コンクリート」を山岳トンネル工事に適用
-覆工コンクリートの高品質化 セントル養生システム-

2013年05月29日  リリース[コンクリート]

株式会社鴻池組(本社大阪市 社長:蔦田守弘)は、覆工コンクリートをセントル養生期間中、冷却・加温することで品質・耐久性向上を図る「春秋(はるあき)コンクリート-セントル養生システム」を、国土交通省近畿地方整備局発注「美浜東バイパス佐田トンネル工事」に初めて適用しました。

覆工コンクリートは構造上、施工初期の段階にコンクリートの収縮変形が拘束されひび割れが発生(特にインバート区間)しやすく、また、比較的早期(一般的に打設完了後約14~20時間)にセントルを脱型するため、コンクリート強度不足に起因するひび割れ・剥離が発生しやすくなります。これらのひび割れはそれぞれ夏期と冬期において顕著であるため、打込み時及び打込み後のコンクリート温度は、ひび割れの発生しない適度な温度、すなわち春期か秋期の温度環境下に維持することが効果的であると考えられます。

春期・秋期の温度環境下でコンクリートを打設するためには、コンクリート練上がり温度をコントロールする方法と、打込み時及び打込み後のコンクリート温度をコントロールする方法が考えられます。前者のコンクリート練上がり温度の調整は生コン工場での個別の対応が困難であることから、本工法では型枠養生期間中の型枠温度を調節することで、コンクリートを冷却・加温します。これにより、夏期の収縮ひび割れ抑制と、冬期の初期強度確保を実現します。
「春秋コンクリート」の適用初段として、コンクリート品質の向上が強く求められているトンネル覆工に焦点を当て、岐阜工業株式会社(本社岐阜県 社長:北川智秋)及び株式会社流機エンジニアリング(本社東京都 社長:西村 章)と共同で専用のセントル養生システムを考案し実証しました。具体的には、エアコンで調整した空気(夏期冷却時;10~15℃、冬期加温時;30~40℃)をセントルに設置した送風用配管に通風して、セントル・スキンプレート表面を冷却・加温するとともに、コンクリート打設空間内にも同空気を送気して空間内の温度を調整しました。当社技術研究所で実機を模擬した室内試験の結果、スキンプレート表面を冷却することで、コンクリートの材齢91日における圧縮強度が約30%向上することを検証しました。
これらの結果をふまえ、今回、佐田トンネルで夏期に冷却施工を、冬期に加温施工を行いました。覆工中心部におけるコンクリート温度を無対策箇所と比較した結果、ピーク温度が、夏期冷却施工時に約8℃低下、冬期加温施工で約10℃上昇することが確認されました。また、これに伴いコンクリートの材齢91日における圧縮強度が約10~20%向上することを確認しました。さらに、同じく温度制御に配慮した脱型後の湿潤養生システムを併用することで、ひび割れの無い・美しい覆工コンクリートを構築することができました。

鴻池組では、今回の「春秋コンクリート」の実証により、山岳トンネルを対象とし「セントル養生システム」を適用することで覆工コンクリートの高品質化が実現できることが確認できたため、今後、トンネル工事での適用を進めるとともに、マスコンクリートなどコンクリートの温度制御が課題となる一般構造物への適用拡大を図る予定です。