高効率なトンネル濁水処理システムを開発
-無機凝集剤に替わる最適な有機凝結剤の自動添加-

2013年01月31日  リリース[トンネル・シールド]

株式会社鴻池組(本社 大阪市、代表取締役社長 蔦田守弘)は、株式会社フジテックスとの共同開発により、トンネル工事における濁水処理について、無機凝集剤に替えて有機凝結剤を自動的に最適添加することにより、環境にやさしく、安定的な濁度処理と廃棄物の発生抑制を実現できる高効率濁水処理システムを開発しました。

開発の背景

トンネル工事によって排出される濁水の処理では、一般的に凝集剤として無機凝集剤のPAC(ポリ塩化アルミニウム)および高分子凝集剤が使用されています。処理対象となる濁水は、坑内で発生した湧水がずり出し作業などによって濁水となったもの、削孔水、および生コンの洗浄水などであり、それぞれ性状は大きく異なります。このため、原水の性状や量の時間的な変動に対して、凝集剤の添加量をきめ細かく管理することは困難であり、必ずしも最適な凝集効果が得られない場合があります。

そこで,鴻池組では、無機凝集剤PAC(100ppm~200ppm)に替えて、有機凝結剤(1ppm~3ppm)を添加することで、より優れた凝結効果が得られ、スラッジの発生も抑制できる高効率な濁水処理の開発に取り組んできました。開発に当たっては、この有機凝結剤を原水性状の変化に対応して種類、および添加量を自動で変えることで、最適な凝集効果が得られるシステムを考案し、トンネル工事で実証しました。

システムの概要

本システムでは、異なる原水性状に対応するため、高い凝集効果を発揮する二種類の有機凝結剤を使用します。トンネル現場では原水性状の変化をリアルタイムで測定し、この二種類の有機凝結剤を原水のpH値に応じて配合量を変え、自動添加します。

システム導入効果と今後の展開

実際に現場で排出される濁水を対象にしたジャーテストで、使用薬剤の選定と配合切替え閾値の設定を行い、約1カ月間にわたって自動運転によるトンネル濁水の連続処理を行いました。その結果、原水の濁度は大きく変動しましたが、処理濁度は放流基準70ppmに対し、安定して10ppm以下を満足しました。また、このシステムで処理した脱水ケーキは、従来のPACを使用するシステムによる脱水ケーキに比べて含水率が5%程度低減できたことから、脱水ケーキを約10%減容化して廃棄量を低減し、環境負荷を低減できることが確認できました。現在、島根県の江の川トンネル工事において、ジャーテストで最適な薬剤の選定と配合切替え閾値を確認し、その後は実機により順調に運転を行っています。今後も、全国のトンネル現場に高効率な濁水処理システムの普及を図り、現場の生産性を高めるとともに、なお一層の高度化を目指す予定です。