「高品質高充填覆工コンクリート工法 K-FTL」を初適用

2008年04月22日  リリース[トンネル・シールド]

株式会社 鴻池組

高規格道路トンネルの坑口部補強鉄筋区間でトンネル覆工用のコンクリートの充填性向上により、品質・耐久性を確保

はじめに

株式会社鴻池組(本社 大阪市 社長 玉井啓悦)は、覆工コンクリートの流動性を高めることにより充填性の向上を図り、トンネルの覆工コンクリートの品質および耐久性を向上させる「高品質高充填覆工コンクリート工法 K-FTL」を開発し、西日本高速道路株式会社四国支社発注、高知工事事務所監理の"四国横断自動車道焼坂第二トンネル工事:(株)鴻池組・西武建設(株)特定建設工事共同企業体"において初めて適用した。

工法概要

本工法は、通常のトンネル覆工用のコンクリート(配合名称T1-1;スランプ15±2.5cm)に代えて新たに配合設計を実施したコンクリート(W/C=50%)を用い、これまで充填性確保が困難となる場合があった補強鉄筋区間アーチ天端部への充填性を向上させ密実な覆工コンクリートの打設による品質および耐久性の確保、向上ができる工法である。
この充填性を高めたコンクリートを「高品質高充填覆工コンクリート」と称し今回、焼坂第二トンネル西側坑口部補強鉄筋区間(L=79.0m)に適用し良好な充填性と仕上がり状況を確認した。
今回の焼坂第二トンネルでの適用時には単位水量、単位セメント量および細骨材率を同一としたスランプ値18±2.5cm(配合名称 T1-1(S))とスランプフロー値40±5cm(配合名称T1-1(F))の異なる流動性を持つコンクリートを使用した。それぞれ打ち始めからアーチ肩部までの部分を通常の締め固め方法でT1-1(S)コンクリート、アーチ肩部から天端部打ち終わりまでを軽微な締め固め方法でT1-1(F)コンクリートで打設するという同一スパン内で打ち重ねを行なう方法を用いた。これは型枠に作用する側圧を考慮し、流動性状の異なるコンクリートを合理的に使い分けることによりトンネル覆工用型枠注1の補強を不要としたものである。これにより通常と同様の施工方法で覆工コンクリートの打設が実施でき今回現場適用した「高品質高充填覆工コンクリート工法」の有効性が確認できた。
*注1;全断面スチールフォーム L=10.5m内径12m高さ7.3m;トンネルアーチ形状を持つ移動式の鋼製内型枠

工法の特徴

高品質高充填覆工コンクリート工法の性能上の特徴として、

  1. 軽微な締め固めで十分な流動性をもち充填性に優れるため、コンクリートの充填性確保が困難となりやすい補強鉄筋区間アーチ天端部の密実なコンクリートの打設が可能である。
  2. 施工性が向上し配管、圧送ポンプでの閉塞などのトラブル発生が低減できる。
  3. 練り上がり後、2時間までのスランプロスが少なく、ワーカビリティーの保持が良好で安定したフレッシュ性状を維持できる。
  4. ブリージングの発生が少なく、覆工コンクリート打設時のブリージング水の巻き込みによる弱部が発生しない。また打設縞ができにくく美観に優れる。
  5. 標準の覆工コンクリートと同様に、翌日(材齢15~20時間程度)の脱枠時強度が得られる。
  6. 同一型枠内でスランプが異なるコンクリートの打ち重ねを実施しても、外観の差異は全く無く、強度等の硬化性状に関する品質の問題もない。注2

配合上の特徴

  1. 所定の性状が得られるように単位結合材量を調整し、高性能AE減水剤を用い単位水量の低減(w/c=50%)を図ることで優れた流動性と分離抵抗性を併せ持ったコンクリートとした。
  2. 単位水量、単位セメント量および細骨材率S/aを変化させることなく、高性能AE減水剤の添加量の調整のみによりスランプ値15cm~スランプフロー値45cmまでの広い範囲のワーカビリティーを自在に調整、管理することが可能な配合とした。
  3. 今回の適用時には膨張材を添加することにより収縮補償コンクリート注3とした。
  4. 粗骨材の最大寸法は20mmとし鉄筋区間への適用を図った。
  5. コンクリートに使用する材料は通常の生コン工場、設備にて供給できるものとした。
  6. フライアッシュ、石粉や繊維などの混和材を用いる配合への変更が容易に対応できるものとした。

*注2 模擬覆工型枠への打ち重ね試験とコア供試体の強度試験により確認した。
*注3 収縮補償コンクリート 土木学会コンクリート標準示方書19.1~19.2参照

開発背景

近年、トンネルを含むコンクリート構造物(社会インフラ)の合理的な維持管理の観点からライフサイクルコスト(維持管理、修繕更新費用)の低減、長寿延命化技術の開発が強く求められるようになり、構造物の重要な構成要素であるコンクリートの高品質化、高耐久性化が必要となってきている。また、覆工コンクリートのはく落事故等をうけ、新設トンネルの覆工コンクリートに対して、地山の変状(崩落、変位量の増大、未収束等)や、充填不足による空洞等などの構造的な欠陥、また品質管理上の問題などに起因するひび割れ等の変状や、第三者への被害を与えるはく離・はく落の発生に対しての社会的関心が高まり、これまで以上に覆工コンクリート施工時の品質の確保や耐久性の向上が重要となってきている。
旧日本道路公団 試験研究所(現 株式会社 高速道路総合技術研究所 )においても平成16年より覆工コンクリートのコスト縮減を目指した巻き厚の低減および流動性・充填性の向上に伴う高品質化を目標として「中流動覆工コンクリートの開発」が進められておりライフサイクルコスト(維持管理、修繕更新費用)の低減、長寿延命化のための覆工コンクリートの高品質化、高耐久性化対策の1つとして注目されている。特に補強鉄筋区間での覆工コンクリートの施工性向上による品質確保は重要な課題でありそのためには覆工コンクリートの充填性の改善が必要とされている。

(株)鴻池組は山岳トンネル用の流動化コンクリートとしてNTL工法注4用急硬性高流動コンクリート、繊維補強高強度覆工コンクリート等、また当社開発のアルカリフリー液体急結剤による繊維補強吹付けコンクリートなどの特殊コンクリートの技術的施工実績がある。
高品質高充填覆工コンクリート工法の開発について西日本高速道路株式会社四国支社、株式会社高速道路総合技術研究所のご協力、ご指導のもと実施工トンネル現場で適用し、その効果と有効性が確認できたものである。
*注4 NTL工法 型枠を用いて急硬性高流動コンクリートを打設する方法

工法の効果

本工法の適用によって得られる効果は、以下のとおりである。

おわりに

今回開発した工法は、コンクリートの流動性向上による充填性の改善により、コンクリートの充填が困難となる場合があった補強鉄筋区間のアーチ天端部で確実な充填により密実で高品質、高耐久性をもつ覆工コンクリートの施工を実現できるものである。
また、形状的に充填が困難である断面変化部、妻部隅角部、箱抜き部などへの適用も考えられる。本工法はトンネルの覆工コンクリート以外にも、明り工事の鉄筋構造物への適用も可能である。
現状では本工法に用いた高品質高充填覆工コンクリート配合はコスト的に高価であり適用区間が限定される場合もあるが、今後材料、配合の研究を重ねさらなるコスト低減を図り高品質、高耐久性の覆工コンクリートの実現を目指す。
(株)鴻池組としては、今後、同工法の普及と受注に向けて、全国的に展開を進めていく予定である。

以上

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