旧鴻池本社ビルにて連結制振構法の効果を確認
2008年03月17日 リリース[免震・制震・耐震]
株式会社 鴻池組
(株)鴻池組(本社 大阪市 社長 玉井啓悦)では、複数の建物をダンパーで連結した実建物を用いて振動実験を行い、連結制振構法の効果を確認した。
連結制振構法は、振動性状の異なる隣接する建物をエネルギー吸収能力の高い部材で連結し、互いの振動を制御する地震に対して効果的な構法であり、数例の施工実績がある。今回、隣接する複数の建物をオイルダンパーで連結した建物の解体にあたり、連結制振の効果の確認を行うために振動実験を行った。
大阪市に立地する旧鴻池本社ビルは、4棟(1棟は12階、他は9階)からなっている。1995年の兵庫県南部地震(大阪で震度IVを記録)後、棟間に19個のオイルダンパーが設置され、ダンパーのエネルギー吸収により耐震性能を向上させた。
今回の実験は4棟のうちの2棟を対象として、急速開放油圧ジャッキ(最大荷重1800kN)3台を9階床レベルの建物間に設置し、押し広げた後、急速に荷重を除くことで建物を自由振動させた。ダンパーが取り付けられた状態と取り外した状態の両方で実験を行い、その結果を比較することにより、ダンパーの効果を確認した。
実験結果の概要は以下の通りである。
- ダンパーの有無にかかわらずジャッキによって最大30mm程度の棟間変形を生じさせ、除荷直後に200cm/s2を超える加速度が発生した。
- ダンパーを取り外した場合と比べダンパーが取り付けられている場合、棟間変位、加速度とも振幅が早く減衰した。
- 加速度記録より計算した減衰定数は、ダンパーを取り外した状態では9%であったが、ダンパーが取り付けられることにより13%に増大した。
- 除荷後4秒付近でダンパーが取り付けられている場合の振幅はダンパーを取り外した場合の振幅の70%程度に低減された。
- 実験結果について数値解析を行い、解析結果は実験結果とよく一致しており、解析手法の妥当性が検証された。
この建物ではダンパー設置による耐震改修後地震観測を行っており、多くの記録が得られている。今回の実験結果をもとに地震時についての解析を行い、地震時のダンパーの効果についてもさらに詳しい検討を行う予定である。また、建物に設置されていたオイルダンパーの一部を回収し、出荷時と同じ条件で振動試験などの検査を行い、性能確認を行う予定である。
![]() 建物外観 |
![]() オイルダンパー設置状況 |