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泉岳寺「浅野長矩公墓及び夫人墓」の修復完了

-石造文化財の保存修理-

2020年12月16日 リリース

株式会社鴻池組(本社 大阪市、代表取締役社長 蔦田守弘)は、これまでに培ってきた石造文化財の保存修復技術を活かして泉岳寺に所在の『浅野長矩公墓及び夫人墓』の修復を20201130日に完了し、赤穂義士により討ち入りが行われた1214日を迎えることができました(写真-12)。

国指定史跡『浅野長矩墓および赤穂義士墓』

浅野家の菩提寺である泉岳寺内には、1701(元禄14)年、江戸城・松之大廊下で吉良上野介義央公との刃傷沙汰におよび、切腹に処せられた浅野内匠頭(たくみのかみ)長矩公とその御正室の瑶泉院(ようぜんいん)(阿久利姫)が、1702(元禄15)年に吉良上野介義央公を主君の仇として討ち取った大石内蔵助良雄ら四十七義士とともに眠っています。この墓所は、1922(大正11)年38日に『浅野長矩墓および赤穂義士墓』として国史跡に指定され、墓所には300年以上経った今日でも、国内外を問わず多くの参詣者が訪れています。しかし、関東大震災後に行われた前回の解体修理からおよそ100年が過ぎ、外柵の風化による損傷や歪みが激しく、墓石には傾きが生じていました。

修復の概要

工事は2カ年に分けて行い、2019年は長矩公墓の主体部(外柵を除く)の修復を行い、2020年には長矩公墓の外柵と夫人墓全体の修復を行いました。
修復では、「浅野長矩墓及び夫人墓保存修理委員会」の指導の下、できるだけ既存の部材を再利用し、そのための保存処理は将来の再修理に害を及ぼすことがなく、可逆性(修理前の元の状態に戻す)のある修理方法で再構築することを基本方針としました。また、損傷が激しい部材の新補石には、旧材と同じ神奈川県真鶴産の本小松石を使用しました。
この方針に基づき、①解体工、②保存処理(クリーニング、強化処理、割断部補修、撥水処理)、③造成工、④復元工(据直し)の順に工事を行いました。造成工では、墓石の傾きの是正と、経年による不同沈下の再発を防止するため、長矩公墓および夫人墓ともに基壇内部にステンレス鋼材による補強フレームを設置しました(写真-3)。埋戻しには発生土に消石灰とにがり(塩化マグネシウム)で改良した三和土を使用した伝統工法を採用し、締固めは全て人力で行いました。また、当社がこれまで文化財保存工事で蓄積してきたノウハウをもとに、保存処理で使用する薬剤や施工法を提案し、造成工で使用した三和土の配合検討や、既存および代替の石材の石質分析調査は、当社技術研究所の分析機器を用いて行いました。

おわりに

鴻池組ではこれからも、大切な文化遺産を保護・保全し未来へ継承するための技術研鑽を図り、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットのひとつである「世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する」の達成に貢献していきます。



以 上

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