福岡県宮若市の産業廃棄物不法投棄対策工事完了
-鉛直地中壁設置と汚染地下水浄化により
地下水環境基準を達成-

2013年05月15日  リリース[環境関連技術]

株式会社鴻池組(本社 大阪市、代表取締役社長 蔦田守弘)は、このたび福岡県宮若市(旧若宮町)において「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法」に基づく産業廃棄物不法投棄対策工事を完了しました。
産業廃棄物の不法投棄(主に廃油)に起因する地下水汚染箇所を鉛直地中壁で囲み、下流部への汚染拡散防止措置を行ったうえで、汚染地下水を汲み上げて約39,000m3を処理した結果、下流部の観測井戸における地下水の分析値が地下水環境基準を下回りました。

● 産業廃棄物不法投棄対策工事の概要
宮若市(旧若宮町)において産業廃棄物処理業者が廃油入りドラム缶等を大量に埋設するなどの不適正処理を行った産業廃棄物不法投棄事案に係る特定支障除去等事業で、弊社は平成21年10月に総合評価方式で落札し、対策工事を実施することになりました。
本工事は、ドラム缶から漏出した廃油に起因する高濃度のVOCおよびダイオキシン類に汚染された地下水により、下流部の地下水を汚染するおそれを除去するもので、流入地下水量の制限及び汚染拡散防止のために汚染源周辺に鉛直地中壁を設置し、汚染地下水の揚水と浄化処理を行いました。

● 岩質が変化する破砕帯を含む岩盤における鉛直地中壁の設置
現地の下層岩盤には遮水性に劣る破砕帯が存在したため、遮水性を確保するために岩質が変化する中硬岩層を約7m削孔し、健全な岩盤まで鉛直地中壁を根入れする必要がありました。このため、二軸同軸式オーガーによる先行削孔の前に、ダウンザホールハンマーで1mピッチに芯抜き削孔することで、岩質の変化や破砕帯の傾斜によるケーシングのずれ防止と、削孔負荷の低減を行いました。
鉛直地中壁(等厚式連続壁)の造成には、セメントミルクに流動化剤を添加することによりソイルセメントの流動性と攪拌混合効果を高めることのできるECO-MW工法(NETIS登録番号KK-050019-A)を採用し、鉛直地中壁の均質性を高め、遮水性を向上させました。

 

● 促進酸化法による溶解性ダイオキシン類の浄化
汚染地下水処理設備は(写真-2参照)、①高濃度のVOCを除去する曝気処理装置、②鉄・マンガンと懸濁性ダイオキシン類を除去する凝集沈殿処理装置・砂ろ過装置・MF膜処理装置、③溶解性ダイオキシン類を除去する促進酸化装置から構成され、地下から汲み上げられた汚染水を地下水環境基準以下に浄化して放流しました。
特筆すべき促進酸化装置は、凝集沈殿処理や膜処理だけでは除去が困難な溶解性ダイオキシン類対策として設置したものです。オゾン・過酸化水素・UVを併用して発生した強力な酸化剤であるOHラジカルにより溶解性ダイオキシン類を分解することで、ダイオキシン類濃度が最大580pg-TEQ/Lの原水を0.34pg-TEQ/L以下まで低減することができました。
平成23年1月から開始し、平成25年2月の完了までの約25ヶ月で約39,000m3の汚染地下水を汲み上げて処理した結果、下流部の観測井戸における地下水の分析値が地下水環境基準を下回りました。
 

表-1 汚染地下水の分析結果

有害物質 地下水環境基準 処理前 処理後
ダイオキシン類 1pg-TEQ/L以下 最大580Pg-TEQ/L 最大0.34pg/L
ポリ塩化ビフェニル 不検出(0.0005mg/L未満) 最大0.018mg/L <0.0005mg/L
トリクロロエチレン 0.03mg/L以下 最大0.33mg/L <0.003mg/L
テトラクロロエチレン 0.01mg/L以下 最大1.6mg/L <0.001mg/L
シス-1,2-ジクロロエチレン 0.04mg/L以下※1 最大3.4mg/L <0.004mg/L
ベンゼン 0.01mg/L以下 最大1.5mg/L <0.001mg/L

※1:1,2-ジクロロエチレンの地下水環境基準(平成21年11月の地下水環境基準の改正後)