技術広報誌ET

技術広報誌ET 2019年発刊号

プレキャスト工法による
免震タワーマンションの建設

493号(2019年04月01日) グランドメゾン内久宝寺町2丁目タワー計画 技術本部 土木技術部 為石 昌宏・吉田 涼平

はじめに

当建物の敷地は大阪平野で唯一の高台である上町台地に位置し、付近には難波宮跡や大阪城があるなど市内中心部にありながらも落ち着いた環境の中にあります。建物は基礎免震構造による地上40階建てのタワーマンション(図-1)で、鉄筋コンクリート造の躯体工事はプレキャスト(PCa)工法により大幅な省人化を図っています。ここでは、免震装置工事およびPCa工法による上部躯体工事について紹介します。

完成予想図

図-1 完成予想図

免震装置工事

免震装置として、天然ゴム系積層ゴム10基、鉛プラグ入り積層ゴム10基、減衰こま4基が免震層に配置されています(図-2)。減衰こまは、産業用機械として普及しているボールねじを利用したもので、建物の変形により発生する装置の軸方向の伸縮を回転運動に変換し、回転部に内封された粘性流体の抵抗力によって地震エネルギーを吸収する装置です(写真-1)。
積層ゴムの設置に当たっては、積層ゴム装置の上部に取り付くプレートをあらかじめ打ち込んだPCa部材を現場にて製作し、設置済の積層ゴム上部に取り付けるという方法を採用することで、設置精度が向上し上部躯体との接続がスムーズに行えるようになりました(写真-2)。

完成予想図

図-2 免震装置の配置

開発した養生シート

写真-1 減衰こまの設置状況

免震装置上部部材の設置作業

写真-2 免震装置上部部材の設置作業

PCa工法による躯体工事

基準階の施工が繰り返し行われるというタワーマンションの特徴を活かし、工期短縮、高品質化、省人化および省資源化を目的にPCa工法を採用しています。PCa化した部位は、柱、大梁、小梁、床および階段で、各階ごとに部材を取り付ける工法を採用しています(図-3)。また、建方用のタワークレーンとしてOTA-450N(40m×10t)1基を建物の南側外部に配置しました(写真-3)。

タワークレーンの設置状況

写真-3 タワークレーンの設置状況

表-1に基準階の部材数および部材別の最大重量を示します。揚重能力および部材数から、初期習熟を終えた段階での躯体工事サイクル日数を8日、更なる習熟により7日となることを想定して作業計画を行い、実施においては、10階からほぼ7日で施工しています(図-4、5)。躯体工事の生産性は、1日当たりの施工床面積が約220㎡、1人工当たりの施工床面積が約11㎡となり、関西地区における在来工法による高層マンション建設事例と比較すると、いづれも4倍強というデータで、工期短縮および省人化が達成されています。

図-3 PCa工法概要図

図-3 PCa工法概要図

表-1 PCa部材数(基準階)

表-1 PCa部材数(基準階)

図-4 サイクル工程表(7日型)

図-4 サイクル工程表(7日型)

図-5 躯体工事のサイクル

図-5 躯体工事のサイクル

おわりに

2019年3月末現在、36階の躯体を構築中で下階より順次仕上げ工事を行っています。2020年1月の竣工・引渡しに向け、職員および協力会社関係者が一丸となって、安全第一に工事を進めてまいります。

工事概要

工事名称 (仮称)グランドメゾン内久宝寺町2丁目タワー計画
工事場所 大阪市中央区内久宝寺町2丁目5番1号
発注 積水ハウス(株) 大阪マンション事業部
設計・監理 意匠・設備 (株)IAO竹田設計  構造 (株)鴻池組
施工 (株)鴻池組
工期 2017年3月~2020年1月
主要用途 共同住宅(分譲) 244戸
構造・規模 RC造 一部鉄骨造(基礎免震構造) 地上 40階
建築面積 1,536.57㎡ 延床面積 30,308.43㎡

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493号(2019年04月01日)の記事

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