技術広報誌ET

技術広報誌ET 2018年発刊号

すべり基礎構造
-音響実験棟箱型実験装置への適用-

488号(2018年01月01日) 設計本部 建築設計第2部 関谷 英一

はじめに

いつ、どこで発生するか予測が困難な大地震に対して人命や財産を保持すること、建物を継続使用することは日本の構造技術者にとって大きな課題です。免震構造はその解決方法のひとつであり、近年、公共建物をはじめ、病院、共同住宅などに普及しています。一方で、多くの人々が最も長い時間を過ごす戸建住宅についても免震はありますが、主にコスト面の問題によりあまり普及が進んでいません。

すべり基礎構造の概要

そこで、免震構造の代替案として、「すべり基礎構造」が提案されています。「すべり基礎構造」はその名の通り、地震時に基礎がすべり、地震力を建物に伝えにくくする仕組みです。ここで紹介する「すべり基礎構造」は早稲田大学の曽田研究室にて主に戸建住宅用に研究・開発されたシステムです。強風や震度5程度までの中小規模地震では基礎は移動せず、概ね震度6強以上の大地震時に基礎がすべり、建物へ入力される地震力を低減させます。すべり面は地盤側の基礎に接着された超高分子量ポリエチレンシートと、建物側の基礎に打ち込まれたフレキシブルボードで構成されています(図-1)。

図-1 すべり面の詳細

図-1 すべり面の詳細

適用事例

2016年に当社技術研究所(つくば市)に建設された音響実験棟の箱型実験装置に、第1号物件として本システムを採用しました(図-2、図-3、写真-1)。採用に当たって、技術研究所にて静的・動的実験を行い、概ね設計どおりの外力で基礎がすべることを確認しました。これからは、さらなる性能の向上を図るために、摩擦面で用いる材料の検討が必要です。また、このような優れた技術が一般の確認申請にて簡便に設計ができる法環境や、健全に普及させることができる体制の整備が望まれています。

図-2 平面図

図-2 平面図

図-3 断面イメージ図

図-3 断面イメージ図

写真-1 箱型実験装置

写真-1 箱型実験装置

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488号(2018年01月01日)

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