技術広報誌ET

技術広報誌ET 2017年発刊号

埋蔵文化財の保存工事について

486号(2017年07月01日) 技術研究所 高松 誠

はじめに

文化財保護法では、土地に埋蔵されている文化財を「埋蔵文化財」と定義されています。具体的には、古墳や集落跡などの遺跡や、そこから出土する土器・石器・埴輪などの遺物が当てはまります。現在、埋蔵文化財の存在が知られている土地は、全国で約46万箇所あります(文化庁ホームページより)。

貴重な遺産である埋蔵文化財を、後世に伝え残すために保存が行われます。埋蔵文化財の保存には、原則として遺跡を現状のまま保存する「現状保存」と、やむを得ず現状のまま遺跡の保存ができない場合に発掘調査を行って遺跡の記録を残す「記録保存」があります。

埋蔵文化財を包蔵する遺構面を現状のまま保存する整備工事および、遺跡を記録保存する発掘調査工事について、当社の事例をいくつかご紹介します。

公開・活用に向けた保存整備

史跡として登録された埋蔵文化財の現状保存の工事では、遺跡が置かれた環境や外的な劣化要因から遺構面を保護することが求められます。そのため、本工事前には試験施工による事前検討が行われます。

事例①は、発掘された土器溜りの遺構面を露出展示する際の地下水対策や、風化防止を目的とした保存方法を確立するため、現地でトレンチ掘削を行った試験施工の状況です(写真-1)。事例②は、土遺構面の保護と雑草の植生防止対策として、環境負荷が小さく、草の根を生えにくくする固化材を使用した覆土による保存整備工事で、試験施工後に着手しました(写真-2)。

写真-1 事例① 遺構面保護試験施工(弥生時代の環濠集落跡)

写真-1 事例① 遺構面保護試験施工
(弥生時代の環濠集落跡)

写真-2 事例② 保存整備工事(縄文時代後期前半の環状列石群)

写真-2 事例② 保存整備工事
(縄文時代後期前半の環状列石群)

記録保存のための発掘調査

発掘調査工事では、埋蔵文化財の遺構面の実測や、出土した遺物を収集・整理し、得られた情報の記録を行います。最近では、トータルステーションによる測量のほかに、3Dレーザースキャナーやドローンによる写真測量など、デジタル技術を導入した発掘調査が行われています(写真-3、写真-4)。

写真-3 発掘調査工事

写真-3 発掘調査工事

写真-4 トータルステーションによる測量

写真-4 トータルステーションによる測量

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、経営企画部広報課までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。

486号(2017年07月01日)

技術広報誌ETトップへ
技術に関するお問い合わせ
お問い合わせフォームへ