縦型雨水貯留施設をSOCSで施工

寺畑前川調節池

大阪本店 工事事務所
山内 佳樹

はじめに

兵庫県川西市南花屋敷地区は、一級河川猪名川の右岸に位置し、北には宝塚の山が迫り南は伊丹市に続く丘陵地帯に囲まれた東西に大きな溝のような形をしており、地形を利用して昔は稲作や果実の栽培が盛んに行われていた地域でした。しかしながら、近年の周辺地域の急激な都市化に伴い降雨による浸水被害が頻発するようになり、早急な対策が強く望まれていました。 今回の工事は、このような経緯から浸水被害を防止する目的で3河川の合流する同地区上流部に調節池を設け、豪雨時に増水した河川水を取水施設から取り込み、一時的に貯留する地下調整池を学校のグラウンドの地下に自動化オープンケーソン工法で建設するものです(写真-1、図-1)。

自動化オープンケーソン工法(SOCS)

掘削対象地盤は、GL-30m以深より硬質地盤が出現することに加え、支持地盤はGL+3.7mと非常に高い被圧地下水(自噴)を有しており、地盤や地下水に影響されない自動化オープンケーソン工法が採用されました(ET221、285号参照)。本工法は建設省(現国土交通省)総合開発プロジェクトにおいて官民共同で開発され(当社も参加)、平成8年以来8件目の施工となります(図-2)。

工事概要

本調節池は、外径φ35.0m、内径φ30.0m、躯体長42.6m、沈設長46.2mで、全8ロットで施工します。圧入オープンケーソンとしては国内最大の平面規模です。
掘削対象地盤は、表層から7m付近まではN値0~5の軟弱層、その後30m付近まではN値10~20の砂質粘性土が主体、これ以深はN値50以上の砂礫が主体となります。30m以深の砂礫層は従来のオープンケーソン工法では補助工法なしでは施工が困難と判断される地盤です(図-3)。

施工機械

本工事では、調節池の位置が工事ヤードの片側に偏っておりケーソン径も大きいことから、掘削揚土システムとして水中掘削機と揚土機能をそれぞれ独立して行う分離タイプを採用しています(写真-2、3)。
また、掘削平面積が962m2と大きく、揚土機2台、水中掘削機1台での施工を行うことから、施工機械同士の干渉を防ぐ目的で相互位置関係が確認できるよう、従来の揚土掘削管理システム(掘削場所・深度の把握)を改良しました。本システムにより安全で精度の高い掘削管理が可能となりました(写真-4)。

施工上の課題と対策

地盤の問題点として、表層部からGL-7m付近までの軟弱層(N値0~5)で、躯体コンクリート自重による打設中の沈下や掘削中の過沈下が発生することが 事前検討で判明していましたが、対象地盤を深層混合処理工法にて改良を行うことにより、過沈下等の発生もなく施工を行うことができました。また、地層が南 北方向に傾斜しているため掘削断面に対し地層が異なり、ケーソンの傾きや偏心等が懸念されましたが、ケーソン刃先部の掘削パターンを適切に選定することで 現在まで順調に施工を進めています。
ケーソン本体の施工は、1ロット(6m)あたり構築約40日+沈設約20日の60日で進捗しています。当現場の資材搬入路にはJR福知山線の踏切があり、遮断時間を考えると1ロットのコンクリート打設量1,530m3を1日で打設することが不可能となっており、コンクリートは現場から約500m(写真-1)離れた位置より配管内を圧送し、ロットを2分割(3mずつ、1回あたり765m3)して打設を行っています。
現在最終ロットの沈設作業を行っており、刃先深度GL-38m、水平傾斜量5mm(1/7,000)で、平成18年12月初めの沈設完了を目指し工事を進めています。

おわりに

都市水害対策である縦型雨水貯留施設の施工方法として、場所や用地の制約を受けず、さまざまな土質に対応でき、大深度・大口径の施工が可能なSOCS工法を用いた当現場の施工が、今後の事例への参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称 (一)淀川水系寺畑前川調節池整備工事(第1期)
工事場所 兵庫県川西市南花屋敷4丁目
発注 兵庫県阪神北県民局
施工 大林・鴻池・大豊・新井特別共同企業体
工期 平成16年3月~平成19年3月
工事内容

調節池   ケーソン1基(貯留量:19,400m3

         外径φ35.0m 内径φ30.0m 

         沈設長46.2m

取水施設  L=79.5m(横越流堰L=36.4m)
河床切下げ L=56.5m(流水量11m3 /sec)

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427号(2007年02月01日)