供用中の高速道路におけるロックボルトを用いたトンネルの補強

東海北陸自動車道 小瀬子トンネル補強工事   

名古屋支店 工事事務所 白井 淳裕/土木事業本部 技術部 若林 宏彰 

はじめに

当工事は、東海北陸自動車道 郡上八幡IC-ぎふ大和IC間に位置する小瀬子トンネル(下り線)において、天頂部に設置された補強鋼板(厚さ4.5㎜、標準寸法1.5m×2.8m、全54枚)にロックボルトを打設することにより、補強鋼板の二重の安全対策を行うものです。
当工事の主な特徴は以下の通りです。
○過去に類似の設計や施工事例がほとんどない、詳細設計業務が含まれたトンネル補強工事である。
○供用中の2車線高速道路トンネルを交互に規制しながら、狭小な作業エリアで工事を進めなければならない。
○朝9:00から夕方17:00と限られた作業時間内に、ロックボルトを打設し、車線規制解除時にボルトの補強効果を発揮できるような施工方法を選定する必要がある。
以上のことから、工事中の一般車両への第三者災害の防止と工事関係者への安全確保を最優先とし、確実な補強効果が得られる施工方法を選定する必要がありました。
 
 

設計上の留意点

詳細設計においては、①ロックボルトの配置計画、②使用材料の選定、③湧水発生時の対処方法に留意しました。
①ロックボルトの配置計画
ロックボルトの設計荷重は、「高速道路付属物の二重の安全対策設計・施工暫定要領」に準拠し、鋼板および覆工コンクリートの自重に安全率3を乗じた値とし、予定工期内に収まるように長さ、本数を検討した結果、長さ2mのロックボルト(D22)を鋼板1枚につき2本(約1本/2m2)配置することとしました。また、ロックボルトの打設方向は、落下による荷重が鉛直方向に作用すること、削岩機の規制車線外へのはみ出しが懸念されることから、できる限り鉛直方向としました(図-1)。

②使用材料の選定
全鋼材は、本設仕様として溶融亜鉛メッキによる防錆処理を施したものを使用するとともに、ボルトの固定には、緩み止めナットを採用し、将来的な脱落を防止する策を講じました。また、定着材は、早期に強度が発現するカプセル式早強モルタル(材令3時間で10N/mm2以上の圧縮強度)を採用し、車線規制解除時の安全確保を図りました。


③湧水発生時の対処方法
湧水発生時には、定着材の流出によるボルト引抜き耐力の低下が懸念されるため、定着材式から摩擦式の鋼管膨張型のロックボルトに変更することにしました。 

 ②施工機械等の規制車線外へのはみ出し防止対策
規制車線外へのはみ出し防止策として、作業員への安全教育の徹底や作業手順書の再確認、供用中の高速道路工事に慣れた監視員を配置しました。
また、規制車線外への工具や資材の飛来落下防止策として、高所作業車における作業台の養生や、工具落下防止コイルの装着を行いました。


③削孔時のくり粉飛散対策等
集塵機搭載型削岩機を採用し、削孔中のトンネル壁面にゴムカバーを押し付けながらくり粉を吸引することで飛散を防止しました(写真-2,3)。

写真-4にロックボルトの定着状況を示します。

 

おわりに

前述の検討・対策を実施した結果、無事故・無災害で予定工期内に工事を無事完了できました(写真−5)。
当工事は、供用中の高速道路トンネルを規制しながら施工した類似事例の少ないトンネル補強工事であり、この貴重な経験を、今後増加が予想されるインフラ再生工事に活かしていきたいと思います。
 

  

工事概要
工事名称 東海北陸自動車道 小瀬子トンネル補強工事
工事場所 岐阜県郡上市八幡町瀬取
発注 中日本高速道路(株) 名古屋支社
施工 (株)鴻池組
工期 平成27年1月~平成27年9月 
工事概要

ロックボルト工  削孔工 216m
                     注入・補強材挿入工 216m
樹脂注入工 45m2
覆工コンクリート補修工 3m2
継手鋼板脱落防止工 40本
鋼板切断・撤去工 35m

 

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480号(2016年01月01日)