BIMを活用した省エネビルの設計と施工

近電商事大阪玉造ビル   

大阪本店 工事事務所 井上 宣良/設計本部 笹田 浩司 

はじめに

建物の省エネルギー化に対する要望は、東日本大震災後の電力供給問題や地球環境問題への関心の高まりと共に増えています。当ビルの建築計画に当たっては、発注者からZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)への取り組み意向が示され、当社もこれまでの研究成果を活かすべく、発注者と協働してZEBに取り組むこととなりました。
ここでは、ZEBへの取り組みに加え、数年前より全社的な取り組みを始めたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した設計・施工について紹介します。
 

建物概要

 当建物は鉄骨造7F建て、延床面積が約5,570㎡の事務所ビルです。3F~7Fが事務室ゾーン、2Fが駐車場、1Fが荷捌きスペースとなっています。なお、2Fが自走式駐車場になっているため、建物の南側に車路スロープ(RC造)を配置して2Fへの動線を確保する計画としています(図-1、2)。

BIMの活用

当社では、設計段階だけでなく施工の前段階でBIMモデルを活用することで、手戻りの減少や品質の向上を目指しています。現在、BIM推進スケジュールの第2次3ヵ年計画の一環として「施工BIM検討会」を立ち上げ、施工段階でのBIM活用について検証を進めています。当現場も対象工事の1つであり、具体的には「外装・内装のプレゼン」、「基礎パネルゾーンの納まり検証」、「鉄骨建方計画」などにBIMを活用しています。これらにより、内外装の仕上がりに関する視覚的な確認や施工シミュレーションが可能になりました。

○実施設計時の設計モデル(図-3、4
設計段階で作成した意匠モデルは、ボリュームやファサードの検討に活用すると共に、内外装の使用材料決定時の発注者へのプレゼンに効果を発揮しました。また、構造モデルは鉄骨の概算数量や基礎梁の断面等の確認に活用しています。

○現場施工図レベルでの検証モデル(図-5、6
施工段階では、基礎の詳細配筋図による鉄骨柱のアンカーボルトと鉄筋の干渉チェック、鉄骨の取付順序やクレーン位置等を視覚的に検討可能な鉄骨建方シミュレーションにBIMモデルを活用しています。

ZEBへの取り組み

発注者の所属する企業グループは電気関連の事業を行っていることから、省エネルギーに対する意識が高く、近年注目を集めているZEBへの取り組み意向が示されました。当社においても、数年来ZEB実現に向けた研究に取り組んでおり、関連技術を取り入れたビルの設計・施工に強い関心を寄せていました。両者の意向が一致し、協働してZEBに取り組むことになりました(図-7)。
 

○採用技術と削減計画値
採用した要素技術は、省エネシステム・高性能機器設備を中心に以下の通りです。なお、これら技術の採用により、消費エネルギーは基準値1,632MJ/m2に対して、設計値は931MJ/m2となり、42%の削減が可能になります(表-1)。
【 建物(外皮)性能向上 】
・高断熱遮熱サッシの採用 (Low-E複層ガラス)
【 省エネシステム・高性能機器設備の導入 】
・センサー付高効率エアコンの採用
・CO2濃度による外気導入量制御の採用
・全熱交換器の採用
・ナイトパージ・外気冷房の採用
・LED照明の採用
【 創エネルギーの導入・その他 】
・太陽光発電設備の導入 (20kW)
【 ZEB実現に寄与するシステム 】
・BEMS  (計測、データ収集、分析、チューニング等運用時への展開)
・システム制御技術の採用   (ICカードによる照明・空調連動制御など)

 

 

おわりに

 多くの関係者の間で検討や議論を繰り返しながら、BIM活用とZEBへの取り組みを進めてきました。今夏の竣工に向け工事は順調に推移しています。今回の経験を活かし、これらの技術を今後の関連プロジェクトに展開していきたいと考えています。
 
 
工事概要 
工事名称 (仮称)今里ビル新築工事
工事場所 大阪市東成区東小橋1-13-7
建築主 近電商事(株)
設計・監理 (株)鴻池組
施工 (株)鴻池組
工期 平成27年1月~平成28年8月 
建物用途 事務所
構造・規模

S造(一部RC造)

地上7階
建築面積 1,247.64m2

延床面積 5,572.59m2

 

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480号(2016年01月01日)