3m×1m×3mm厚 超大判タイルの外装適用に向けて

建築事業本部 建築設計管理部
岩下 智 

 

はじめに

これまでのタイルの常識を超える「3m×1m×3mm厚」の超大判、薄厚のタイルが、イタリアより輸入・販売されています(写真-1)。日本国内においては、2011年7月の販売開始以降、建物内部の壁や床、什器類の表層材、船の内装等に採用されています。材料の特徴である大判サイズや多様なカラー、テクスチャーから、シームレスのイメージで多様な表情をデザインでき、1m2当たり重量も7.5kgと従来のタイルに比べ1/3程度に軽量化できます。
当社では、この材料を活用した提案を展開すべく、内装への適用を進めると共に、メーカーおよび販売元と協力して国内での外装適用に向けた様々な検討を行っています。

※ 製造元:Laminam S.p.A(イタリア)
  輸入・販売元:ローマタイル・ジャパン(株) 

 

材料試験による特性の確認

当タイルは吸水率が0.1%以下であることから、JISによる分類ではⅠ類(≒旧規格の磁器質)に該当するいわゆるセラミックタイルです。寸法がJISの規程(タイルは605mm以下で分類)を超えていることもあり、本タイルの性能評価においては、陶磁器質タイルとしての評価に加え、ボードなど、想定される用途に応じた性能にも着目しました。その結果、以下の試験を当社技術研究所で実施し、メーカー提供の試験データと合わせ、より幅広い材料性能を確認できました(写真-2~4)。
なお、タイル裏面には0.5mm厚のガラス繊維メッシュが接着剤で貼付されており、衝撃等の外力による破壊時も飛散しないようになっています。また、2枚を重ね合わせた7mmタイプや5mm厚の製品も提供されています。

【素材試験】
曲げ試験、引張試験、衝撃試験
【コンクリートへの打ち込みを想定した試験】
変形追従性試験(曲げ引張、曲げせん断、圧縮)、接着強度試験、熱冷繰返し抵抗性試験 

 

 

内装での設計施工事例

デザイン性の非常に高い材料であることから、国内で販売開始以来、店舗やショールームの内装(床、壁など)を中心に採用されています。当社では上記材料試験による特性の把握と並行して顧客への提案を行い、事務所ビルの内装に適用しています(写真-5、6)。
 

 

乾式工法による外装モックアップの試験施工

当タイルは、メーカーの所在地であるイタリアを初めとし、欧州を中心に外装にも適用されています(写真-7)。当社では日本での外装適用に向けた課題の抽出や改善案を検討すべく、標準ディテールによる外装パネルを輸入し、モックアップの試験施工を行いました。


外壁改修にも適用できる「ダブルスキン工法」を想定し、鉄骨およびALC版による下地壁(写真-8)を構築し、それを覆う外装として大判タイルによる外装パネルを取り付けました(写真-9)。パネルは、3m×1mのタイルの四周をアルミ枠が囲い、裏面に補強のリブが付いています。リブの本数は必要とされる耐風圧に応じて設定します。なお、今回のパネルは補強リブ1本タイプを採用しています。
パネルは、パネル両端の縦方向に設置されたレールに、アルミ枠に加工された欠き込み(フック形状)を引っ掛けることで設置します(写真-10)。また、パネルは下方から上方に順次設置し、アルミ枠の一部をレール等の下地材にビスで固定します。 

 

おわりに

2013年8月現在、耐風圧に対する検討および面内変形追従性能を確認するための層間変形試験を準備しています。これらによって乾式工法による外装適用を実現すると共に、各種材料試験によって得られたデータに裏付けされたPCa打込み工法を確立し、新たな材料によるデザイン性の高い外装を提案する予定です。

 

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471号(2013年10月01日)