歴史的文化遺産の保存修復調査・技術

貴重な文化財は、自分たちの世代だけのものではなく、後世に伝え残していくために保存しなければなりません。文化財を保存する上で重要な判断基準となるのが、Authenticity(オーセンティシティ、和訳:真正性、真実性)です。特に文化遺産を保存修復する際には、創建時の材料、構造、工法がどれだけ保たれているかが求められます。一方で、伝統技術・材料では風化や劣化を防止する性能は決して高くはありません。したがって、創建時のオリジナル材の特性を把握するとともに、様々な対策・検証を行わなければ保存修復に着手することはできません。
当社の技術研究所では、これまでの経験で積み重ねてきたノウハウと保有技術・施設を活用し、歴史的文化遺産のオリジナル材料の情報を得るための調査や、得られた情報に基づいた保存修復仕様の検証と耐久性向上のための提案を行っています。最近の主な事例を紹介します。

① 石造アーチ橋の積石調査
都内所在の石造アーチ橋(明治時代前期)の積石について、岩種及び産地推定のための鉱物分析・同定を行い、オリジナル材の特性と新補材選択のための情報収集を行いました。


② 石造アーチ橋の目地材調査と耐久性向上
九州地方所在の石造アーチ橋(明治時代後期)に使用されているオリジナル目地材の配合調査を行い、補修目地の材料(配合)提案と耐久性能の検証試験を行いました。


③ 墳墓展示埴輪の耐久性向上
東海地方所在の前方後円墳(古墳時代前期)に露出展示する埴輪の製作仕様を決定するため、発掘埴輪片の素材分析と耐久性・破壊防止対策の提案、検証試験を行いました。

③ 墳墓展示埴輪の曲げ強度試験 


 

(技術研究所 髙松 誠)

470号(2013年07月01日)