既設線路に立体交差するアンダーパス道路の建設

大阪府道高速大和川線と南海本線との立体交差に伴う土木工事  

大阪本店 工事事務所
日高 典哉/小山 孝 

 

はじめに

大阪府道高速大和川線は、大阪都心部の慢性的な渋滞解消および沿道環境の改善のために「大阪都市再生環状道路」の一部を形成する路線で、堺市堺区築港八幡町で阪神高速4号湾岸線から分岐し、松原市三宅中で同14号松原線に連絡する全長約9.7kmの自動車専用道路です。本工事は、この大和川線と南海本線の交差地点において、南海本線の下部の横断区間(L=41.5m)にボックスカルバートを築造する工事です(図-1)。 南海本線の列車運行を妨げることのないよう、軌道への影響を最小限に抑えることが可能なアール・アンド・シー工法が採用されています。 

 

アール・アンド・シー工法の概要

図-2に施工フローを示します。本工事では、アール・アンド・シー工法の中でも到達側に反力体を構築してPCケーブルで函体(ボックスカルバート)をけん引するけん引形式を採用しています。設置する函体の外縁と同じ形状で矩形の鋼製ルーフ(箱形ルーフ)を先行設置し、一方に切羽掘削用の刃口を備えた函体を築造して鋼製ルーフに囲まれた部分を掘削しながら函体と置き換えていきます(図-3)。函体の上床部に相当する水平ルーフ上に、上載地盤との縁切用のFCプレートを配置・固定することにより、上載地盤を乱さずに函体をけん引することができます。本工法によるボックスカルバートの施工事例としては、国内最大級の断面形状となっています。 

 

 

函体けん引までの仮設工事 

工事では、既設構造物撤去や地中障害物の撤去から始まり、軌道下地盤の地盤改良工、地中連続土留壁の造成、立坑掘削および土留支保工架設、発進立坑でのU型ドックの構築など、4函体のうち2函体の築造に取りかかるまでの仮設工事に約3年の月日を要しました。
函体をけん引・設置する軌道下の地盤改良には、ダブルパッカー工法による薬液注入を採用し、軌道直下の施工は夜間施工で行い、線間および坑口部は昼間施工で実施しました。
地中連続土留壁の施工は、軌道横については列車近接作業を考慮して低空頭3軸削孔機によるSMW工法を採用し、その他は施工性と排泥の発生抑制に配慮して5軸削孔機によるECO-MW工法(写真-1:当社保有技術)を採用しました。
発進立坑の施工では、函体製作を行うスペースを確保する必要があるため、RC造のU型ドックを構築しました。 

 

函体けん引に係る仮設工事 

函体けん引に係る仮設工事として、箱形ルーフの推進及びガイド導坑の築造を行いました。水平ルーフの推進(写真-2)は発進立坑から実施し、工期短縮の目的からオーガー式掘進機による機械施工を実施しました。垂直ルーフ(写真-3)は函体製作と同時進行で到達立坑から人力推進により施工することにより、工期短縮を図りました。 

 

函体の製作

函体刃口(写真-4)は、10列5段構造で50の部屋に分かれており、各部屋に切羽土留用のフェースジャッキが備えられています。
前述のとおり函体断面が非常に大きいため、函体刃口を構成する鋼材の使用量は約400tにものぼります。
函体は4函体で構成され、現在2函体が製作済みです。函体底面には、ヤードとの縁切り及びけん引時の摩擦を軽減する目的から、全面鋼板を敷いています。函体の重量は、先頭のB1函体で4,750t、B2・B3函体が6,500t、最後尾のB4 函体は6,900tあり、使用するコンクリートは約9,800㎥、鉄筋は約1,500tにものぼります(写真-5、6)。 

 

函体けん引

函体けん引作業は、昼間作業により日進量分の掘削・土留作業を行い、夜間の線路閉鎖後に函体けん引および箱形ルーフの推進を行います。
掘削作業は、上3段については人力掘削を行い、下2段については人力および機械併用で行います。掘削土はベルトコンベヤで函体後方へ送り、油圧ショベル等にてベッセルへ移した後、クレーンにより桟橋上の仮置ヤードへ揚重します。日進量は350~380㎜で、1日に約150㎥の掘削土が発生します(写真-7)。
先頭のB1函体を推進するためのジャッキは64本設置し、設計推力は8,000t にも及びます。B2函体をけん引するためのフロンテジャッキは48本設置し、反力立坑内の反力壁金具まで全384本のPC鋼線で繋がっており、設計推力は5,600t になります。函体幅が大きく上部の軌道部への影響範囲が広範となるため、函体けん引時に上載の盛土が到達方向へ押され、軌道へ影響を及ぼさないよう、水準および枕木のカントを監視する自動計測に加えて、レベルおよびトランシットでレール高さおよび通りを監視しながら函体けん引を実施しています(写真-8)。
 

 

 

おわりに

本工事は、現在運行している南海本線の下部に近接してボックスカルバートを築造する工事であり、列車運行を妨げることのないよう、軌道への影響を最小限に抑えることが可能なアール・アンド・シー工法を採用しました。
函体築造に取りかかるまでの仮設工事に実に約3年の月日を要しましたが、現在は、4函体の内2函体が施工完了と順調に工事を行っています。
今後も函体けん引後の挙動管理を含め、直上を走る南海本線の列車の運行を阻害することなく工事が無事完了できるよう、万全の体制で臨んでいきます。
 

 

工事概要
工事名称 大阪府道高速大和川線と南海本線との立体交差に伴う土木工事 
発注 南海電気鉄道(株) (事業主体:阪神高速道路(株)) 
設計 中央復建コンサルタンツ(株) 
監理 (株)シーエス・インスペクター 
施工 南海辰村建設・鴻池組・錢高組共同企業体 
工期 平成21年4月1日~平成26年3月31日 
工事場所 大阪府堺市堺区鉄砲町1~七道西町地内 

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470号(2013年07月01日)