吹付けモルタル工法による山留め壁の施工

京都産業大学(仮称)新1号館

大阪本店 工事事務所
中山 貴/寺内康則

はじめに

京都産業大学は京都市北部の上賀茂に位置し、近くには世界文化遺産に登録されている上賀茂神社があるなど、自然に恵まれた環境の中に立地しています。また、傾斜地にあるキャンパスからは、素晴らしい眺望が得られます。
当工事は理工系学部の学科増設に伴う校舎の新設で、既存棟に挟まれた敷地において行われています。また、建物は傾斜地に配置されている関係上、山側の斜面に対して大規模な山留め壁が必要となりました。今回の報告では、この山留めに採用した吹付けモルタル工法(ソイルネイリング工法)について紹介します。

 敷地条件と山留め壁の計画

建物は地上4階、地下2階建てで、地山の傾斜に対して建物が長手方向に配置され、敷地東側の斜面上部には、大学関係者の車や他工事の工事車両が通行する構内道路が通っています(図-2、写真-1)。

地下躯体の構築に当たっては、4面に山留め壁を構築し風化岩および埋め土を掘削する必要がありました(図-3)。山留め壁は、掘削深さや土質、地下水位などから判断し、親杭横矢板工法を基本として計画を進めました。しかし、工期が厳しいことや風化岩の強度が非常に高いことなどから工法を見直し、東側の風化岩部分については今回報告するソイルネイリング工法を採用しました(図-4)。
土木工事の法面安定などに用いられる本工法は、特殊加工した鋼棒(ネイル)を適正な間隔で地中に設置し、補強土塊を構成する工法です。ネイルの長さや間隔、傾斜角は、土質条件や載荷条件を設定することにより算定できます。

 

 ソイルネイリング工法による山留め壁の施工

施工は、①掘削→②ワイヤーメッシュ張り・削孔→③グラウト→④ネイル設置・養生・締付け→⑤モルタル吹付けの施工手順を繰り返すことで、掘削と並行して山留め壁が形成されます(写真-2、3)。本工法の主な特長として、以下が挙げられます。
○掘削と並行して山留め壁が形成される(工期短縮)
○小型機械による施工が可能(狭所や急傾斜での作業可)
○騒音・振動が少ない
○確立された設計計算法により信頼性が高い

 

◎施工手順(写真-2)

 

おわりに

ソイルネイリング工法を採用した山留め壁の施工では、モルタル表面に固定したターゲットを、光波による3次元座標計測で追跡しながら安全を確認して施工を進めました。計測結果は、最大変位が±2㎜とほとんど挙動がなく、無事に地下工事ができました。
3月末現在、鉄骨建て方も終了し、上部躯体工事を行っている状況です。8月の竣工に向けて今後も気を引き締め、第三者災害はもちろんのこと、無事故・無災害でお客様に建物を引き渡したいと考えています。 

 

工事概要
工事名称 京都産業大学(仮称)新1号館新築工事
工事場所 京都府京都市北区上賀茂本山436他
発注 学校法人京都産業大学 理事長 柿野欽吾
設計・監理 (株)日建設計
施工 (株)鴻池組
工期 平成24年6月~平成25年8月
構造・規模

SRC造(一部RC造・S造)、地下2F 地上4F
建築面積 1,730.47m
延床面積 7,005.12m

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、経営管理本部 経営企画部CSR・広報課までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。 

 

469号(2013年04月01日)