情報化施工(TS)による出来形管理の実施事例

長岡京高架橋下海印寺工区

大阪本店 工事事務所
原 暢夫/伏見 昴

 

はじめに

京都第二外環状道路は、一般国道478号京都縦貫自動車道路の一部を構成し、大枝IC(仮称)~久御山ICをつなぐ総延長15.7kmの上下4車線の自動車専用道路です。
本工事では、京都府長岡京市の約480mの区間において、一級河川小泉川の付替えを行い、長岡京高架橋を新設しました(写真-1,2)。


小泉川を付替えするにあたり、まず現況の小泉川の中央に締切矢板を打設し、右岸・左岸の護岸を順番に施工しました。最後に締切矢板を引抜き、護床を施工しましたが、取水期・渇水期の制約条件もあり、限られた工程の中でスピーディーな施工が求められました(写真-3)。また、本工事は、土工における情報化施工技術の導入効果(施工効率・施工品質)の検討および情報化施工に対応した監督・検査の検証などを目的とした試験施工の対象工事です。
本号では、河川付替工施工時のTSによる出来形管理の実施事例について紹介します。


※ TS: トータルステーション(情報化施工)
 

 

TSを用いた出来形管理技術

TSを用いた出来形管理技術とは、従来の水糸・巻尺・レベルなどを用いた高さ・幅などの出来形計測とは異なり、施工管理データを搭載したTSを用いて出来形計測を行うことを指します。また、データをソフトウェアにより一元管理して、一連の出来形管理作業(工事測量、設計データ・図面作成、出来形管理資料作成など)に活用することで、作業の自動化・効率化を図ることができます。

 

TSによる出来形管理の実施

本工事では、道路・河川土工の出来形管理を、「施工管理データを搭載したトータルステーションによる出来形管理要領(案)」により実施しました。
TSによる出来形管理では、まず基本設計データをパソコンで作成し、TSに入力します。そして現場で計測したデータをパソコンに出力することで、出来形管理資料を作成することができます(図-1)。基本設計データをパソコンに入力した後は、帳票完成までに測定者が記録・入力する必要はなく、人為的ミスも防止することができます(表-1)。

また、計測データを保存し、パソコンに出力することにより、自動で帳票が作成できるため、計測後の計算や帳票作成時の転記などの作成手間を大幅に短縮することができます(図-2)。さらに、TSの測量方法は、従来の方法のように測線ごとに測点を設置して計測を行う必要がなく、任意の点を好きなところから計測することができます(図-3、4)。本工事では右岸・左岸の護岸を順番に施工したため、①基本になるセンターの位置を出せない、②施工ヤードが狭く、満足のいくところにニゲの測点が設置できないといった課題がありました。こういった課題に対して、TSによる出来形管理を実施することにより、精度の高い出来形管理を行うことができました。
また、本工事では、現況の河川を半分ずつ施工する必要があったため、常に水が流れている状況での管理を行いました。

 

TSを使用することにより、一度に多くの点を計測でき、その都度設計値との差を確認することができるため、短時間でより確実に管理を実施することができました(写真-4、5)。
また、計測と同時に設計値との差を画面ですぐに確認できることで、施工途中の出来形を過不足なく管理でき、作業における手待ちや手戻りを発生させることなく、現場を進捗させることに活用できました(図-5)。

 

まとめ

本工事では、情報化施工の一環としてTSによる出来形管理を実施しましたが、その結果として数々の効果を確認することができました。今回のノウハウを活かし、さまざまな分野や工種において情報化施工を実現し、より良い品質を提供できるよう努めていきます。

 

工事概要
工事名称 京都第二外環状道路長岡京高架橋下海印寺工区工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 京都国道事務所
施工 鴻池組・極東興和異工種建設工事共同企業体
工期 平成21年9月~平成24年4月
工事種別 自動車専用道路
工事場所 京都府長岡京市下海印寺地先
工事規模

橋梁下部工事
二枚壁式橋脚 (H=11.0m~15.5m) 3基
壁式橋脚 (H=10.5m~13.0m)       4基
場所打ち杭 (L=8.5m~28.0m)     64本
河川付替工                                 一式
橋梁上部工事
3径間連続PRCラーメン箱桁橋 総延長 L=122.5m
3径間連続PRCラーメン箱桁橋 総延長 L=132.0m

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468号(2013年01月01日)