緊急対策工事と無人化施工

長殿地区河道閉塞緊急対策工事

平成23年9月の大型台風12号による大雨で、奈良県の十津川村長殿谷では、東京ドームの5倍を超える約680万m3もの土砂が崩落し、河川を堰き止め、満水時には約270万m3(H23.9時点推定量)もの水量を蓄える土砂ダムが発生しました。
さらなる大雨によって土砂ダムの堤体が崩れると、土石流となり下流域へ甚大な被害を及ぼす恐れがあることから、土砂ダムの崩壊を防ぐために堤頂部と堤体斜面部に仮の排水路を築造する緊急対策工事を行いました。
堤頂部の現場へは、作業員や建設機械が近づくことができないため、工事関係者は毎日ヘリコプターで往復しました。また、作業用の大型重機は3トン以下の重量となるように分解し、ヘリコプターで運搬した後、現地で組み立てました。

 

 

無人化施工

掘削・盛土の工事中の安全確保のため、崩落の危険性がある右岸側に防護用の土堰堤を築造する必要がありましたが、この作業自体が大変危険なため、「無人化施工」を行いました。
「無人化施工」は、1969年の富山大橋の応急復旧工事にリモコン式(有線)水陸両用ブルドーザーが投入されたのが始まりです。1993年の雲仙普賢岳噴火災害緊急対策工事に当時の建設省が「試験フィールド制度」を適用して「無人化施工」を行ったことを契機に、全国の災害復旧工事へ展開されるようになりました。
2004年の新潟県中越地震の災害対策工事の際には、無人化施工機械が活躍する姿をテレビなどで見られた方も多いでしょう。
今回使用した1.0m3級バックホウは、分解対応型としては国内最大級です。緊急対策工事用として開発され、国土交通省が所有しているもので、国内に2台しかありません。
オペレーターが重機の操作室にいなくてもリモコンで操作できるようになっており、約100m離れた位置からこの重機をリモコン操作し、防護土堰堤を築造しました。

  (土木事業本部技術部 吉田貴志)

 

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465号(2012年04月01日)