プレキャストPC構法による病院の施工

市立四日市病院

名古屋支店 工事事務所
吉藤 尚登/児玉 伸明

 

はじめに

市立四日市病院は、昭和14年に創設され、昭和53年に現在の場所に新築・移転した後、三重県北勢地域で最大規模の病床を有する病院として地域住民の多様な医療需要に対応しています。今回の増築・改修工事は、建物や設備の老朽化への対応や救命救急医療の機能充実が目的となっています。
本報告では、当社が担当した建築工事の内、増築棟建設に採用されたプレキャストPC構法による躯体工事について紹介します。

 

建物概要

増築される新病棟は免震構造が採用され、病院敷地南東角に建設されます(図-1)。この病棟には、病室(4人床室および個室)、新生児集中治療室および手術室(12室)が配置され、最新のMRI機器などが設置されます。
既設の病棟については、6人床病室を解消して4人床室や個室に改修されます。また、外来部門についても診察室の改修が行なわれ、バリアフリー対応のエレベーターが増設されます。一方、救命救急センター(ER棟)については、最新のMRI機器の設置、処置室および病室を拡充するため増築工事が行われ、平成23年3月末に引渡しをしています。

 

プレキャストPC構法の概要

新病棟増築工事に採用されたプレキャストPC構法(工法名;PC圧着関節工法)は、プレストレス構法とプレキャスト工法を組み合わせたもので、柱、梁とも工場生産によるフルPC部材です。梁には運搬中の衝撃や架設時の応力に対応するため、工場でプレストレスを導入しています(1次ケーブル)。梁は柱に設けられたあごに載せることで無支保工で架設されます。また、2次ケーブルは柱と梁を圧着接合するためのケーブルで、現場でシース管に挿入された後、降伏応力の約半分のプレストレスが導入されます(図-2)。
この構法のメリットとして、耐震性能に優れた高靭性・復元力、ひび割れ防止などの性能・品質向上に加え、現場作業の省力化などの生産性向上も挙げられます。


 

プレキャストPC構法による新病棟の施工

本構法の採用により、柱・梁によるラーメン架構は全てプレキャスト部材となっています。原設計の柱部材は、2階分で1ピース(最大重量18t)となっていましたが、高所作業の削減、揚重機の合理化や取り付け作業の平準化に配慮し、1階分で1ピース(最大重量10t)の積層工法に変更しました。また、床にトラス筋付きデッキを採用することで、工期短縮と型枠工事に伴う騒音の低減に努めました。なお、揚重機には500tm級のタワークレーン1基を用い、1フロア18日サイクルの工程で部材の建方、PC緊張やグラウトなどの作業を行なっています(図-3)。

主な工程の作業状況を写真-2に示します。各施工段階においては、安全設備の先行設置や安定した場所での作業が可能となり、少人数のチームによる繰り返し作業によって高精度の躯体を安定的に構築することができました。

 

 

 

写真-2 プレキャストPCの施工状況(①~⑨)

 

おわりに

平成24年2月末現在、新病棟増築工事は内装および外構の工事中で、5月のオープンに向けて4月より病院備品の引越しを行ないます。その後、既設病棟の改修工事に着手し、平成25年7月の竣工に向けて順次工事を進める予定です。
地域の中核となっている病院の増築と改修を同時に行なうという今回の工事は、当社にとって貴重な経験となりました。今後もこの実績を活かし、お客様のニーズに応えた「建物を使用しながらの改修工事」を提案していきます。

  

工事概要
工事名称 市立四日市病院病棟増築・既設改修工事(建築工事)
工事場所 三重県四日市市芝田二丁目地内
発注 四日市市 四日市市病院事業管理者 一宮 惠
設計・監理 市立四日市病院 新病棟整備課
株式会社 内藤建築事務所
施工 鴻池・大宗特定建設工事共同企業体
工期 平成22年3月~平成25年7月
構造・規模

(増築新病棟)
RC造、一部S造、地上8階 地下1階 塔屋1階
建築面積1,624.9m2、延床面積12,207.9m2

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、経営管理本部 経営企画部CSR・広報課までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。

465号(2012年04月01日)