国内初、PCB特別管理産業廃棄物の現地処理

鶴見川遊水地土壌改良工事

東京本店 工事事務所
永塚 典幸/橘 敏明

 

はじめに

横浜市にある鶴見川多目的遊水地のうち鶴見川と鳥山川合流部付近には、鶴見川多目的遊水地の排水門建設工事および横浜市橋梁工事において確認されたPCBなどの有害物質および異物(木材、プラスチック、がれき類など)が混在している土砂(異物混入土)が一時保管されています。国土交通省では、鶴見川多目的遊水地の遊水地機能を確保することを目的に、これら異物混入土のうち、PCBなどの濃度が比較的高いものについて、現地で「土壌無害化処理」(PCB特別管理産業廃棄物の現地処理)を行い、環境改善を行う工事を実施しています。現地処理は、異物混入土を保管している場所(写真-1)で実施されます。
当社は、この土壌無害化処理工事に係る施設・設備の実施設計、横浜市条例に基づく環境影響評価、処理施設の設置、処理および浄化物(産業廃棄物)の処分、施設の解体などを担当しています。この工事は、PCB特別管理産業廃棄物の現地処理として、国内で最初の工事となります。

 

異物混入土処理に関する経緯

異物混入土は、鶴見川遊水地建設事業における排水門建設工事(4,461m3)および横浜市市道のワールドカップ大橋建設(1,019m3)時に確認され、PCBやダイオキシン類が基準値を超えています(表-1)。この異物混入土の保管方法について、平成12年の土壌処理技術検討委員会でその対策工がとりまとめられました。その結果、平成13年3月~平成14年5月に一時保管対策工事(異物混入土を集積し密閉保管)が行われ、現在まで保管されています。
無害化処理については、平成14年4月~平成18年2月に無害化処理技術評価委員会で処理方法が検討され、土壌無害化処理技術の公募が行われました。応募技術20件の中から選定された4技術について確認実験が実施され、当社が提案した大気汚染物質の排出総量が少ない「還元熱化学分解方式(ジオスチーム法)」が選ばれました。

 

無害化処理

(1)処理工程
図-1に主要な設備(建屋)の配置を示し、図-2にジオスチーム法による異物混入土の処理工程を示します。異物混入土の掘削・容器詰め込みから外部処分までの一連の作業は、汚染物質などが外部に漏れないように負圧に管理された建屋(テント)内で行い、飛散防止に努めています。
(2)ジオスチーム法
ジオスチーム法とは、(株)東芝、(株)テルム、当社の3社が共同開発したPCB汚染物のPCB分解・還元熱化学分解方式の技術で(図-3)、PCB等処理技術調査検討委員会の技術評価を受けています。具体的な処理方法は、PCB汚染物を間接熱脱着装置により400~700℃で1時間程度間接加熱してPCBを揮発・抽出し、水蒸気分解装置でPCB汚染物より抽出したPCBを含む熱脱着ガスを 水蒸気雰囲気下で約1,100℃に加熱してPCBを分解無害化する技術です。処理施設の状況を写真-2~写真-4に示します。
(3)処理目標値
一時保管土Aの処理目標値を表-2に示します。また、排ガスは、大気汚染防止法、廃棄物処理法、横浜市条例、ダイオキシン特措法の基準を満足するように処理します(表-3)。
(4)全体工程
工期は、H21年2月28日~H25年3月29日までの4年1カ月ですが、環境影響評価や廃棄物処理施設設置申請などの関係法令手続きを約2年7カ月間実施し、平成23年9月20日に工事に着手しました。今後、機械の設置・調整後、平成24年2月より掘削されたPCB廃棄物を約9カ月間かけて処理します。

 

 
 
 

おわりに

本工事は、PCB特別管理産業廃棄物を国土交通省が自ら処理するものです。処理を実施するにあたっては廃棄物処理法、環境関連法令など、非常に多くの手続きを行った後、難分解性のPCB汚染物を現地で処理します。この経験を生かし、今後、PCBやダイオキシン類、POPs廃農薬などの残留性有機汚染物質で汚染された土壌や廃棄物の処理に貢献していきたいと考えています。 

 

 

工事概要
工事名称 鶴見川遊水地土壌改良工事
総合評価落札方式(高度技術提案型(Ⅲ型))
発注 国土交通省関東地方整備局
施工 (株)鴻池組 横浜支店
工期 平成21年2月~平成25年3月
工事内容

工事の種類
 廃棄物処理施設の建設(第1分類事業:産業 廃棄物処理施設の

 新設)及びPCB産業廃棄 物の現地処理(国土交通省の自ら処理)

工事の場所
 横浜市港北区小机町及び鳥山町地先
工事の規模
 事業実施区域 約40,000m2
 敷地面積     約10,000m2
 建築面積     約3,300m2
 処理対象物 異物混入土
   (PCB特別管理産業廃棄物)5,500m3
工事期間
 環境影響評価      平成21年3月~平成25年3月
 施設の設計・建設 平成21年3月~平成24年2月
 処理の実施         平成24年3月~平成24年11月
 施設の解体・撤去 平成24年12月~平成25年3月

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465号(2012年04月01日)