ベントナイト混合土による遮水性の確保

扇田環境センター新埋立処分場第2期遮水等工事

九州支店 工事事務所
矢野 大介

はじめに

ごみ問題はもっとも身近で避けて通れない課題のひとつです。これまでの大量消費、大量廃棄により最終処分場は逼迫しています。このような中、熊本市においてもゴミの減量化やリサイクル活動に力を入れ循環型社会形成に取り組んでいます。
扇田環境センター(新最終処分場)は、熊本市がゴミを適正に処理し環境保全を最優先に考えた基盤施設です。旧処分場の隣接地で総埋立容量150万m3の処分場建設に平成11年6月より着手しました。
本工事は、このうち造成工事完了後の遮水シート敷設、基底部の遮水層などの工事を行うものです。焼却灰や不燃物を埋め立てた後、浸出する汚水が地下に浸透しないように処理するため、法面部はモルタル吹付け(t=10cm)を行いました。基底部においてはベントナイト混合土(t=50cm)を敷設した上に、遮水シートを張る二重の遮水構造となっています(図-1)。本稿ではこのうちベントナイト混合土の管理方法について紹介します。

工事における課題

遮水性を確保するために製造するベントナイト混合土の透水係数は、1×10-7cm/sec以下と厳しい条件で管理することが求められています(表-1)。また、母材となる土砂は処分場造成時に発生した仮置き土を使用するため、土の性状が均質ではありません。このため事前に室内配合試験を綿密に行う必要がありました。

室内配合試験

現地発生土を試掘して分類した結果、おおむね以下の3種類に分けることができました。
発生土1: 粘性土系材料(以下赤土と称します。)
発生土2: 砂質土系材料(以下黒土と称します。)
発生土3: シルト系材料(以下白土と称します。)
これらはフィルダムなどのコア材料の選定基準によれば、恒久的に遮水材に使用する土質材料としては問題はなく、また重金属類の溶出結果でも、土壌環境基準を満足していたのでベントナイト混合土の母材として使用できることが確認できました。
配合試験では、発生土に添加率を変えたベントナイトを混合して透水試験を行い、基準を満たした中で最大添加量を必要とした試料を基に配合量を決定します。試験では3種類の土と現地発生状態に近づけた3種混合ブレンド材(乾燥重量比1:1:1)を加えた4種類に各々ベントナイトの添加率5,10,15%の計12試料を作成しました。
なお、試料作成は実際の混合状態で試験を行うため、本工事で使用する現場プラントで製造しました。このとき使用した混合工法は、回転式破砕混合工法(ツイスター)で従来工法より高品位な混合攪拌が可能なものです(写真-1)。

 

配合試験結果

土質試験結果より、自然含水比状態でのそれぞれの試料の締固め度は95%以上を確保していました。また、透水試験は締固め度95%の状態で変水位法にて行いました。約1カ月ほど経過した時点での透水係数を比較検討した結果、黒土単体だけの場合は他の3種に比べ添加率が非常に高く不経済と判断し、黒土単体の結果を除いた他の3種の中で一番高い母材である白土のベントナイト添加量を基に、添加率を8%に決定しました(図-2)。
したがって実施工では、ベントナイト混合前に発生土から黒土の部分を取り除いて使用することを決定しました。

試験施工

配合試験の結果より、添加率8%で製造したベントナイト混合土を使い試験施工を行いました。主な目的は、締固め度95%以上を確保するための転圧機械の選定、撒き出し厚、転圧回数の決定および敷設されたベントナイト混合土の透水係数の確認です。試験施工には、4tコンバインドローラーと8tタイヤローラーを使用し、それぞれ2回、4回、8回転圧した結果を比較検討しました。締固め度はどちらも4回で目標の95%を超えました(図-3)。
試験施工の結果より使用機械は8tタイヤローラを用い転圧回数は4回、撒き出し厚は30cm(仕上り厚25cm)の2層仕上げで施工することに決定しました。さらに、施工された部分のベントナイト混合土をブロックサンプリングし、透水試験を実施した結果、透水係数は2.3×10-8cm/secで目標透水係数となりました。

日常管理 

 現場では、室内配合試験、試験施工から得られた配合量、転圧回数、撒き出し厚で施工管理を行っています。発生土は毎回製造前に含水比試験を行い、ベントナイトが混合できる範囲内にあるかを確認し、必要に応じて、加水、乾燥処置を行っています。同時に発生土内に黒土が混入していないことも確認しています。また定期的(500m3毎)に透水試験用に施工されたベントナイト混合土のブロックサンプリングと現場密度試験を実施しています(写真-2)。 

 

 

おわりに

現在も施工中ですが、これまで実施した透水試験結果は全て透水係数1×10-7cm/sec以下で管理基準を満足しています。しかしながら現地発生土を使用しているため大きな土の性状変化が起きないとも限りません。そのため今後も発生土の状況を常に確認しながら管理を行っていく所存です。

 

工事概要
工事名称 扇田環境センター新埋立処分場第2期遮水等工事
工事場所 熊本県熊本市貢町1567番地 扇田環境センター内
発注 熊本市
管理 中日本建設コンサルタント(株)
施工 鴻池・弥生・昇・松本建設工事共同企業体
工期 平成22年10月~平成24年3月

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464号(2012年01月01日)