CFT-R造を採用した高層複合ビルの施工

新大阪阪急ビル

大阪本店 工事事務所 東影 正博
/ 建築設計部 浅井 純

 

はじめに

新大阪阪急ビルは、大阪の玄関口であるJR新大阪駅の北側に隣接する複合ビルです。
敷地は、南側にJR新大阪駅、西側に国道423号線(新御堂筋)に面しています。当建物は、交通の要所となる新大阪駅のコンコースに直結する計画となっており、同時に、緑化の推進や良好な都市環境づくりが計画されています。
現在、平成24年7月末の竣工に向けて施工中です(写真-1)。

当社は1986年よりコンクリート充填鋼管(CFT)造に関する技術開発を進め、適用実績を積み重ねてきました。その後、CFT造で培ってきた技術の高度化を目指して、鋼管内に鉄筋を挿入したCFT-R造の開発に着手し、2008年9月に(株)都市居住評価センターの一般評定(図-1)を取得しました(ET449号参照)。当建物にはこのCFT-R造の柱が採用されています。ここでは高層複合ビルにおけるCFT-R造の施工について紹介します。

建物概要

建物は地上17階建てで、その階層構成は、1階がバス停留所・機械室・防災センターなど、2階と3階の一部が飲食店舗・物販店舗、3階~11階が賃貸事務所、12階~17階が宿泊特化型ホテルとなっています。また、屋上にはヘリコプター緊急救助スペースが設置されています(図-2)。
3階の南側でJR新大阪駅コンコースと連絡、2階の西側で新御堂筋歩道橋を経由して地下鉄新大阪駅コンコースと連絡することで、周辺の歩行者交通の利便性向上とバリアフリー化を促進する計画とされています。

 

CFT-R造について

CFT造は、鋼管内にコンクリートを充填する構造で、RC造、S造と比較して、鋼管と充填コンクリートの相乗効果により、耐力、剛性、靭性性能を向上させることができます(図-3)。
CFT-R造は、CFT造の充填コンクリート内に鉄筋を挿入するもので、一般のCFT造に比べると、内蔵鉄筋が応力を負担する分、CFT造に比べてさらに大きな構造耐力を確保することができます(図-4、5)。
当建物では建物北側の円形鋼管柱の1~7階に、このCFT-Rの柱を採用しています。CFT-R柱の構成は、鋼管762φ、内蔵鉄筋は主筋8-D35、フープD13@150および@300、充填コンクリートはFc60N/mm2となっています。

 

 

 

CFT-R柱の施工について

内蔵鉄筋の製作

CFT-R柱の内蔵鉄筋は、鉄筋加工工場で、各階ごとのユニットに分割して製作しました。
鉄筋ユニットには、組立精度を保持するため、主筋内側に円形の精度保持金物(FB-9x75)を設置し、主筋支持金物(L-30x30)によって精度を確保しています。また、柱鋼管とのかぶり厚さを確保するため、ユニット外周部にスペーサー(FB-6、各鉄筋ユニットごとに3カ所)を設置しています(図-6)。
 

現場施工手順について

CFT-R柱の内蔵鉄筋は、第3節(7階柱)鉄骨建て方終了時に、鋼管柱上部より鋼管内に挿入するものとしました。
施工手順(図-7)は以下の通りです。
(STEP1)
クレーンにより内蔵鉄筋の第1ユニットを吊り込み、鋼管柱内に挿入する。この際、鋼管柱の1階圧入孔開口位置と主筋が干渉しない角度で挿入する。挿入後、かんざし金物によって鋼管柱上部(8FL+1000レベル)に仮固定する。
(STEP2)
内蔵鉄筋第1ユニット上部に第2ユニットを吊り込み(写真-2)、機械式継手によって主筋の接合(写真-3)を行う。主筋接合完了後、鋼管柱内に第2ユニットまで挿入する。
(STEP3)
前記の工程を繰り返し、最終ユニットの設置まで行う。
(STEP4)
内蔵鉄筋の最下端を鋼管柱脚部のベースプレート上に定着して設置する。完了後は鋼管柱の最上部をシートで覆い、鋼管柱内部に異物などが入るのを防止する。
(STEP5)
1階の圧入孔より充填コンクリートを圧入する。圧入施工は、鋼管柱上部から検尺テープとCCDカメラを挿入して、圧入速度や充填状況を確認しながら行う。
以上の手順を踏んでCFT-R造の内蔵鉄筋施工完了後、次節(4節)の鉄骨建て方となります。

 

おわりに

CFT-R柱の施工について、綿密な計画と管理を行うことにより、無事に当該部分の施工を完了することができました。 当工事の施工経験を生かし、今後の工事へ展開していきたいと考えています。

 

工事概要
工事名称 (仮称)新大阪阪急ビル新築工事
工事場所 大阪市淀川区宮原1丁目1番4号
発注 阪急電鉄(株)
設計・監理 (株)日建設計
施工 建築:(株)鴻池組 電気:東光電気工事(株) 機械:(株)三晃空調
工期 平成22年5月~平成24年7月
構造・規模 鉄骨造(一部柱はCFT造、またはCFT-R造) 地上17階、塔屋2階
建築面積   3,167.53m2
延床面積 35,605.66m2

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、経営管理本部 経営企画部CSR・広報課までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。


 


 

464号(2012年01月01日)