新桜宮橋をグレーチング床版にて架設

1号桜宮地区道路改良

大阪本店 工事事務所
日高 典哉

はじめに

一般国道1号桜宮拡幅区間は大阪都心部と大阪北東部を隔てる大川(旧淀川)に架かる数少ない路線であるため、慢性的な渋滞が発生しています。また、同区間の周辺には、駅などの公共施設が多くあり、多くの歩行者や自転車が桜宮橋を行き交っています。
同区間の拡幅事業は、現在の桜宮橋(銀橋)の補修工事とともに、上流側に新しい橋(新桜宮橋)を架け(写真-1)、さらに国道1号の東野田交差点から東天満交差点までの0.7kmについて、交通混雑の緩和、快適で安全な歩行空間の確保、市民がより一層親しみやすくかつ使いやすい道路、地域の活性化を目的とし、現道幅員22m(4車線)から幅員40m(6車線)に拡幅する事業です。
本号では、現在の桜宮橋(銀橋)に並んで建設される新桜宮橋の主径間部(鋼単純ローゼ桁橋)の床版工について紹介します。

施工計画

施工条件として一級河川の大川(旧淀川)を航行する船舶の航路として、幅45m、TP+3.70mを確保する必要があります。通常のRC床版では型枠設置用足場が必要となるため、桁下制限を上回ります。よって、新橋の床版には型枠用足場が必要ないI形格子床版(グレーチング床版)が設計されています。

I形格子床版

I形格子床版は一般にグレーチング床版とも呼ばれ、RC床版の主鉄筋に相当する主部材として小型のI形鋼を使用し、I形鋼と直角方向に異形鉄筋を組み合わせます。さらに、I形鋼の下面に、コンクリート打設時の埋め殺し型枠として、厚さ1.2mmの亜鉛鋼 板を取り付けた格子構造のプレハブパネルからなります(図-1、写真-2)。

パネルはすべて工場で製作され、現場に輸送されます。現場では、パネルを桁上に据え付け、パネル相互の連結などの調整および止水処理を行った後、コンクリートを打設し完成します。
この床版には以下の特徴があります。
・現場での型枠、支保工が不要であり(写真-3)、なおかつ鉄筋の配筋作業についてはパネル同士の接合部補強筋のみであり、RC床版に比較して工期の短縮が図れます。

・型枠工、鉄筋工などの特殊技能工が不必要で橋梁特殊工と普通作業員の組み合わせで作業ができます。
・コンクリート打設前でも剛性を有しているので、コンクリート打設前に敷鉄板等で養生をすれば、パネルの搬入車両、架設用の重機などの荷重に耐えることができます。

床版コンクリート打設

本橋のようなアーチ系橋梁には、次のような構造特性があります。
・非対称荷重が作用した場合には、反対側では上向きに変形し、床版は引張力や曲げの影響を受けます。すなわち、非対称にコンクリートを打設した場合、後打コンクリート荷重の影響を受けて若材令の先行打設したコンクリートに引張力や曲げが作用し、ひび割れが発生します。
このことから実施工に際しては、アーチ主構造、横構および床組構造(横桁、縦桁)をモデル化した立体骨組構造で解析を行い、打設に伴う変形応力が発生しない打設方法・順序を決定しました(図-2)。

また、床版コンクリートのひび割れ発生を抑制するために、事前技術提案として、以下のことを行いました。

1ブロックの施工に使用するバイブレータはポンプ筒先に2本と締め固め用として4本の計6本を使用しました。締め固め用バイブレータはチェックシートを作成し、締め固め漏れのないように管理しました(写真-4)。

床版についてはコンクリートの品質確保と共に大川への環境汚染防止を図るために、打設時の漏れが心配されました。そこで事前に水張りによる漏水確認を行い、漏水個所にはコーキングによる防水対策を行いました。

おわりに

打設後のひび割れ調査の結果、0.1mm以下の微細なものであり、技術提案の効果が確認されました。
また、床版コンクリート打設後に、近隣高校生による桜と大川の流れをイメージしたアートペインティングを行いました(写真-5)。

当工事では、グレーチング床版での施工により船舶の航行を阻害することなく、安全かつスピーディに施工することができました。今回と同様の制限がある場合には、有効な工法ですので、この事例が今後の参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称 1号桜宮地区道路改良工事
工事場所 大阪市都島区網島町地先~大阪市北区天満1丁目地先
発注 国土交通省 近畿地方整備局
施工 (株)鴻池組
工期 平成17年11月~平成19年3月
工事内容 工事延長760m(橋梁部230m、土工部530m)
橋梁上部:  グレーチング床版 2,960m2
                 コンクリート床版工 1,520m2
橋梁下部:一式、舗装:一式、道路修繕:一式、電線共同溝:一式

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429号(2007年04月01日)