シールド二次覆工省略型に新しい被覆工を適用

此花シールド

大阪本店 工事事務所 大村英士 / 瀬川一郎
土木技術部 林 茂郎

はじめに

本工事は合流式下水道改善および送泥ネットワーク計画の一環として、此花下水処理場から市岡下水処理場までの約3.3km区間に泥水式シールド工法で二次覆工省略型のシールドトンネルを造り、その内部に雨水滞水池と下水汚泥圧送管を築造するものです(ET418号参照)。本工事のシールド到達部を、シールド機外殻内にスチールセグメントを組み、パルテム・フローリング工法(以下FR工法)で仕上げましたので、その概要を紹介します。

被覆工の選定

被覆工は以下のような条件を考慮して、FR工法を二次覆工用技術に改良し適用しました。

二次覆工用FR工法

FR工法は下水道等の管更生技術であり、管内に組み立てた鋼製リングに高密度ポリエチレン製の表面部材を組み付け、表面部材とスチールセグメントとの間に 特殊充填材を注入することにより内面を平滑に仕上げるものです(図-3、4、写真-1)。人力施工のため大掛かりな仮設備が不要であり、また内側からの支保工が不要であるため坑内空間が広く安全な施工が可能となります。
管更生用として適用する場合の充填材は、強度や水中不分離性、既設構造物との付着性が求められます。しかし、二次覆工用として適用する場合、複雑な形状 の部材の隅々まで充填できるように高流動性や無収縮、ノンブリージング性は求められますが、力学的な強度は外部のセグメント等が担うため、充填材の強度条 件を緩めることができ、その結果コストが縮減できます。表-1、2に充填材の規格値および示方配合を示します。
充填材は場外の専用プラントで製造してミキサー車で運搬し、モルタル充填ポンプにより地上から圧送しました。充填材の運搬時間は約40分でしたが、スランプロスはほとんどなく良質な品質を保持して充填することができました。また、表面のたわみをおさえるため、1回の打ち上がり高さを500mm以下としました。

おわりに

FR工法による被覆工は、内空寸法調査、鋼製リング製作から現場での二次覆工充填完了まで、当初の予定通り約1カ月で作業を終えることができました(写真-2)。
工期・コストを縮減する二次覆工省略型シールドはもともと覆工厚が薄いため、今回のような終端部や急曲線部・流入部などの特殊断面部に内面が平滑なRC セグメントを適用することが困難です。このような場合に、今回用いた二次覆工用FR工法は適応性が高く、かつ経済的な工法と言えます。今後発生する同種の課題に対して参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称 千島下水処理場~此花下水処理場雨水滞水池築造工事(その2)
工事場所 大阪市此花区酉島5-10-62
発注 大阪市
施工 鴻池・三井住友・竹中土木・大鉄特定建設工事共同企業体
工期 平成16年3月~平成19年9月
工事内容 シールド一次覆工(L=3258m)
汚泥圧送管設置工、インバート工
特殊マンホール工(発進人孔構築、中間立坑構築)
立坑工(PCウェル工)

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428号(2007年03月01日)