市街地かつ狭隘敷地での施工計画

三条高瀬川商業ビル

大阪本店 工事事務所 五郡 文治
/ 後藤 伸高

はじめに

当現場は、京都市中京区の市街地にあって、南側に三条通り、東側に高瀬川を挟んで木屋町通りという、共に交通量の多い道路の角地に位置しており、敷地西側には商業ビルが境界際に隣接しています。
当該建物は、間口(東西)13m、奥行(南北)39mという狭隘な敷地いっぱいに計画された、鉄骨造地上10階地下1階の商業ビルであり、立地条件から周辺交通に影響を与えない施工計画とする必要がありました。今回、当現場で実施した施工計画の内容について紹介します(写真-1)。

施工計画概要

当該敷地内への出入は南側三条通りから行いますが、昼間は車両および人通りの途切れることがなく、工事車両を道路に止めての搬入等道路使用はできない状況です。従って、資材等の搬入は車両ごと敷地内に乗り入れる必要がありましたが、敷地内に十分な仮設ヤードを確保できないため、計画には苦慮しました(図-1)。当現場における施工計画上のポイントを下記に示します。

  1. 既存建物の地下解体と基礎新設が効率よく実施できる構台計画
  2. 工区分けにより建て逃げ方式を可能とした鉄骨建方計画
  3. タワークレーンによる資材揚重計画

構台計画

当現場の特徴として、既存建物の地下躯体を利用する計画となっています(地下外壁は山留として、耐圧版上の二重ピットは、発泡モルタルを充填することで基礎地盤として利用)。従って地下工事においては、解体工事と基礎工事を兼用した構台を計画しました。また、新設建物の1階床が道路レベルよりも高い (1FL=GL+2,100mm)ことから、鉄骨建方および仕上げ材搬入時も部分的に構台を利用する計画としました。
敷地が狭い状況で、地下および鉄骨建方工事を円滑に行うため、構台の盛替えを計画しました。下記にその手順を示します(図-2、写真-2)。
STEP-1:既存地下躯体の北側半分を先行解体し、中央部に構台架設。
STEP-2:先行構台上に25tトラッククレーン、構台材料を仮置きし、南側解体後に構台架設。

鉄骨建方計画

鉄骨建方は大きく3工区に分割し、50tトラッククレーンを使用し建方を行いました(図-3)。最終のC工区については、外周部の鉄骨をトラッククレーンにて建方を行い、残りについては屋上に設置したタワークレーン(JCL-015C)を使用しました。
外部足場については、鉄骨建方後の設置が困難なため、建方と同時の設置を計画しました。北・東・南面の外壁仕上げがカーテンウォールのため、外周部鉄骨梁に先アングルを設置し、建方本締め完了後、次節建方前に足場設置を行いました(写真-3)。
また、東側高瀬川上空については本体柱よりブラケットを出し足場板敷きの上に設置しました。また、近隣商業ビル側については、近隣商業ビルの屋上部より上空にブラケットを出し、足場を設置しました。

資材揚重計画

仕上げ材等資材の取り込みについては、当初工事用エレベータを計画していましたが、合理化を図り、各階に設けた仮設開口を使用する計画に変更しました。場内に資材搬入後、屋上に設置したタワークレーン(JCL-015C)にて揚重しました。各階の資材取り込みについては、アングル枠にアルミ製足場板を設置し車輪にて移動できるステージを製作しました。また開口部周囲および移動ステージには落下防止用の養生枠を設置し、安全を確保しながら合理化を図りました(図-4、写真-4)。

おわりに

今回、周囲の道路状況および設計条件等多くの制約がある中で、無事工事を完了することができました。これは、店内での事前計画がベースにあり、現場で詳細に計画できたこと、自治会等の近隣、警察、河川課等と協議を重ね、関係各所の協力が得られたことが大きいといえます。

工事概要
建物名称 (仮称)三条高瀬川商業ビル新築工事
工事場所 京都市中京区三条通河原町東入中島町90番地
発注 (株)シスコ・アセット・マネージメント
設計・監理 (株)アソシエイテッド・アーキテクツ設計
施工 (株)鴻池組
工期 平成18年5月~平成19年9月
構造・規模

S造(一部RC造) 地上10階地下1階

建築面積 407.70m2 延床面積 3,681.21m2

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435号(2007年10月01日)