プレキャスト工法による高品質な高層マンションの施工

柏の葉キャンパス147街区計画

東京本店 建築設計部 安野 郷
工事事務所 武智伸泰

はじめに

当建物(名称:パークシティ柏の葉キャンパス二番街)は、約3万m2の広大な敷地に、住宅 棟6棟、住戸数880戸という大規模な分譲マンションです。秋葉原からつくばエクスプレスで約30分、柏の葉キャンパス駅から徒歩5分という都心からアクセスがよい場所にあります。周辺は「柏の葉国際キャンパスタウン構想」のもと、公・民・学【公共(千葉県・柏市)・民間(企業・市民)・大学(東京大学・ 千葉大学)】の連携により、街が着実に成長しています。

ここでは、高品質かつ工期短縮が可能な施工法として、25階建ての高層棟(C・D棟)に採用したプレキャスト(以下PCa)工法の計画・実施状況を紹介します。

PCa工法

当建物では、小梁のないチューブ架構を採用することにより、住戸プランへ制約を与えないようにしています(図-2)。また、柱および逆梁はフル PCa、順梁はハーフPCaで製作し、梁主筋を機械式継手によって柱梁仕口部内で接合し、現場打ちコンクリートにより柱梁仕口部を構築する工法を採用しま した(図-3)。

住戸内は梁のない構造としており、10.5mスパンに対応するため、床にはPC鋼線を内蔵するボイドスラブ工法(FR板)を採用しました。

揚重機の配置と外部足場計画

躯体のPCa化は、品質向上や工期短縮などのメリットがありますが、生産設備面では揚重部材が大型となるため、在来工法と比べ大型のクレーンが必要となります。

タワークレーンは1棟当たり500tm級を2機配置し、最大部材重量(約17t)を考慮して、建物の近くでクレーン能力が十分発揮できる位置にトラックを横着けし、車上から直接建て方を行う方式を採用しました。また、建物が2棟あるため、互いのサイクル工程を調整する ことにより、PCa部材の吊り冶具などを共有化しています(図-4)。

建物外周には、ユニット式の連層吊り足場を採用しました。躯体施工階のサイクルが進むごとに、クレーンにより足場のクライミングを行います。下階 の外部仕上げ作業についてもクライミング前に作業を終了させる必要があります。したがって、連層吊り足場の高さは、4.5フロア分とし、支持ブラケットの取り付け位置を検討することにより、タイルなどの仕上げ材に影響を及ぼさないようにしました。

サイクル工程

1フロアの面積およびPCaの部材数量などを考慮して、工区を分割せずに施工しました。これによって作業の均一化が図れ、コンクリート打設時に打ち継ぎなどの処理が発生しないようにしました。

1フロアの構築に要する日数は作業の習熟を考慮して12日からスタートし、4・5階では9日、6階以降は計画目標の6日としました。各日の主な作業工程は以下の通りです。

1日目:ユニット足場クライミング・柱PCa建て方
2日目:梁PCa建て方
3日目:内床FR板敷き込み
4日目:廊下PCa・柱PCFセット・配筋・型枠建て込み
5日目:配筋・型枠建て込み(鉄骨階段建て方ほか)
6日目:コンクリート打設

品質の確保

柱PCaの主筋継手は、グラウト充填工法の機械式継手、梁PCaの主筋継手は、エポキシ樹脂充填工法の機械式継手を採用しました。また、一部のフープ筋においても鉄筋の重ね部分にスリーブをセットし、油圧機器で接合を行う機械式鉄筋継手を採用することにより、作業員の熟練度や天候に左右されることなく、継手作業が可能となりました。

柱・梁PCaの建て方精度の確認、機械式継手の施工完了後の確認などは、協力会社の自主検査や担当職員の自主検査など、多くの確認ポイントがあります。また、主要構造体をPCa化することにより、配筋および躯体精度は在来工法に比べ高まり、高品質な躯体を構築することができました。

おわりに

近年、PCa工法は高品質の確保や工期短縮など、超高層マンションの施工にとっては欠かせないものとなっています。当工事の設計および施工経験を生かし、今後も顧客ニーズに応えるためにPCa工法の改善、改良を進めていきたいと考えています。

工事概要
工事名称 (仮称)柏の葉キャンパス147街区計画
工事場所 千葉県柏市若柴227-6 柏の葉キャンパス147街区
発注者 三井不動産レジデンシャル(株)千葉支店
設計・管理 (株)鴻池組
施工 (株)鴻池組
工期 平成20年8月~平成24年4月 (街区全体工期)
構造規模 C棟・D棟;RC造(一部S造)
地下1階 地上25階 塔屋1階

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、管理本部 広報までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。

 

458号(2010年07月01日)