寒冷地のコンクリート品質向上対策

巴農場樋門改築工事

東京本店 工事事務所
片岡 寛 / 高田陽一郎

はじめに

当工事の現場は、北海道の石狩平野を流れる一級河川石狩川左岸に位置しています。冬場のこの地域は、日本海側に面した有数の暴風雪地帯であるとともに、気温が-15℃近くまで低下する厳しい作業環境となります。既存の樋門(巴農場樋門)の老朽化に伴い、新たな樋門の築造を12月~3月の厳寒期に行いました。ここでは、コンクリートの長期耐久性向上とともに、寒中施工における品質確保の取り組みについて紹介します(写真-1、2)。

コンクリートの長期耐久性向上を目指した取り組み

  1. 中性化と凍結融解作用による劣化を低減するために、水セメント比を45%、空気量を5.5%に設定したコンクリートを使用しました。コンクリートの単位水量変動を常時監視し、不適格なコンクリートの混入を防ぐため、連続RI水分計(COARA)を用いて単位水量の管理を行いました(写真- 3)。
  2. 側壁下部に発生するひび割れを抑制するために、側壁部の打ち継ぎ場所を底版上方50cmとしたリフト割にしました。また、側壁部と頂版部を一体で打設することにより、頂版下面部に発生するひび割れを抑制しました。
  3. 温度ひび割れの発生位置を制御して有害なひび割れの発生を防止するために、止水性を備えたひび割れ誘発目地(KB目地)を設置しました。ひび割れ指数1.23以上を目標として温度応力解析を行い、目地間隔を3.25mに設定しました(写真-4)。
  4. 凍結融解作用による劣化を低減するために、コンクリート表面付近の緻密化が期待できる高浸透性無機質改質剤(OSMO)を函渠内面や門柱部分に塗布しました。

寒中施工における品質確保の取り組み

  1. 施工場所を風雪から防ぎ、効率よく給熱養生を行うために、施工ブロックを養生上屋で囲いました。屋根部分は、躯体幅が11.6mと広く積雪荷重や強 風による浮き上がりの影響を受けるため、H型鋼と補強パネルを組み合わせた構造としました。また、資材の投入を考慮してクレーンにより開閉自由な構造の補 強パネルを使用するといった工夫をしました(写真-5)。
  2. 給熱養生は、上屋内部を均一に給熱できるサーモスタット付温風ダクトヒーターを使用しまし た。また、コンクリート打設個所を二重にシートで囲い、給熱効率を向上させました(写真-6)。
  3. 養生上屋解体後は、コンクリート外面の急激な温度低下を防止するために保温材とブルーシートを使用した保温養生を引き続き行いました。(写真-7)。
  4. 給熱養生におけるコンクリート温度の変化を見ると、外壁内部の現場測定値ではピーク値(47.6℃)からの温度差は、解析値(34.2℃)よりも小さい33.2℃で、温度勾配も小さくなりましたが、養生温度の制御に関しては、今後の課題と考えています(図-1)。

おわりに

今年12月の樋門運転切り替えを目指して築堤の盛り立て工事を進めています。現在まで凍害やひび割れの発生は確認されていませんが、引き続き継続調査を行う予定です。当工事の実績が今後の類似工事の参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称 石狩川改修工事の内巴農場樋門改築工事
工事場所 北海道江別市豊幌地内
発注 北海道開発局札幌開発建設部
設計・管理 北海道開発局札幌開発建設部
施工 (株)鴻池組
工期 平成20年10月~平成23年3月
構造規模 河川土工 : 新設樋門土工52,190m3 既設樋門土工16,080m3
法覆護岸工 : 新設樋門5,129m2 既設樋門369m2
樋門本体工 : 内空3.0m×4.8m×2連 延長91.0m 床堀13,700m3・コンクリート3,346m3
旧樋門撤去工 : 一式  付属物設置工 : 操作室上屋一式
仮設工 : 新設樋門二重仮締切 一式・既設樋門二重仮締切 一式

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458号(2010年07月01日)