文教大学旗の台校舎体育館
張弦梁による大空間施工
東京本店 工事事務所 山田 博幸
はじめに

 文教大学学園は、東京都品川区旗の台に昭和2年に裁縫女学校として開設され、今日では幼稚園から大学院までを擁する創立80周年を迎えた総合学園です。
 今回の工事は、同学園発祥の地、品川区旗の台キャンパス(幼稚園、中学校、高校)内の体育館および屋内プールの建て替え工事です。
 既存体育館は、昭和43年竣工で約40年が経過し、老朽化が激しくこのたび建て替えの運びとなりました。また、同キャンパス内の他の校舎も、今後建て替え予定をされていますが、その再開発事業の第一歩目にあたります。
 ここでは、最高高さ15mの制限がある中で、最大天井高さを確保するために採用された、鉄骨梁断面を小さくできる張弦梁構造の施工について紹介します。(図−1、2)

図−1 アリーナパース(提供:(株)日建設計)
図−1 アリーナパース(提供:(株)日建設計)
図−2 アリーナパース(提供:(株)日建設計)
図−2 アリーナパース(提供:(株)日建設計)
張弦梁構造の概要

  当建物のアリーナ屋根は、スパンが25.2mとなるため、張弦梁構造の鉄骨造としました。構成部材は柱、梁、(以下「上弦材」)の主要部材とブレース、繋ぎ梁の繋ぎ材にて構成された部材を、タイロッド(φ36)(以下「下弦材」)にて、緊張することにより梁自重および屋根、天井材荷重によるたわみを解消するとともに柱断面も小さくできています。この張弦梁構造は、身近なもので『傘』という表現があてはまると思います(図−3)。
 この張弦梁構造により、H形鋼とタイロッドで構成された空間は、スポーツに相応しい軽快で、広さをより感じ取れるものとなりました。

張弦梁構造の施工手順および軸力管理・精度管理

 B1F〜3F(RF梁)までのコンクリート躯体を作成し、約1フロアー分の鉄骨建方を行います。その後、主要部分のみボルト締め、屋根材および天井材に相当する荷重部材を載荷し、タイロッドを油圧ジャッキにより緊張します。軸力管理をするために、上弦材、下弦材に歪みゲージを張り付け、パソコンにて測定管理します。精度については、柱の水平移動測定、梁のレベル測定を行い、事前に解析で得られた値を目標に管理していきます(写真−1、2)。
 その後、繋ぎ材のボルト締め、屋根材および天井材に相当する荷重部材を撤去し、鉄骨足元用の根巻きコンクリート打設と同時に屋根の仕上げを行います(図−4、5)。

写真−1 柱脚水平変位計設置
写真−1 柱脚水平変位計設置
写真−2 計測状況
写真−2 計測状況
図−3 張弦梁架構イメージ
図−3 張弦梁架構イメージ
写真−3 タイロッドの緊張状況
写真−3 タイロッドの緊張状況
図−4 断面図
図−4 断面図
図−5 施工フロー図
図−5 施工フロー図
施工方法

 今回、張弦梁は全部で6ヵ所あります。1ヵ所ごとに所定の軸力とレベル管理を行えばよいわけではなく、全体のバランスを考慮し軸力を導入していきます。第一段階として、目標値の80%の軸力を導入し隣のスパンへ移動、同様に繰り返し、全体を80%の軸力を導入後、最初のスパンに戻り100%の軸力を導入します。これは、隣のスパンを緊張するとそれ以前の緊張したスパンの力が抜けてしまうことから、2回に分けての施工となります。
※車のホイールを締め付けているボルトナットのように、隣のボルトを締め付けると隣が緩むのと同様です(写真−3)。

おわりに

 大空間を必要とする建築物での張弦梁構造の施工において、この事例が今後の参考になれば幸いです。

  ―――――工事概要―――――
工事名称
文教大学学園旗の台校舎体育館(仮称)建替え工事
工事場所
東京都品川区旗の台3-1-8
発注
学校法人 文教大学学園
設計・監理
(株)日建設計
施工
(株)鴻池組
工期
平成19年3月〜平成21年1月
構造・規模
RC造(屋根S造) 地下1階 地上3階
建築面積 1,585.18u 延床面積  3,519.38u
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