| ■木製ユニット建築・j.Podの開発 |
京都大学で2つのj.Podが完成し一般に公開されています。一つは京大北部構内の平屋モデル(約40m2)(写真−1)で、もう一つは和歌山研究林の2階建モデル(約80m2)(写真−2)です。j.Podは約10m2の木製ユニットを上下・左右・前後に連結して建物を構築する新しい構法です。木製ユニットは小型の木材を用いたモノコック構造の箱状ユニットで、これを立体的に連結して建物を造る構法がj.Podです。「Pod」とはエンドウ豆のさやを示す英語で、転じて「区画された小さなスペース」という意味で用いられます。
モノコック構造とは自己完結型の構造体で、飛行機や船のボディに多く用いられており、軽量でありながら地震や強風などの外力にきわめて強い抵抗力をもっています。簡易な連結方法を用いると建方と解体が簡便になり、ユニット単位または部材単位での再利用も容易になります。さらに地元産材を利用すれば、森林資源の有効活用への道を拓くことにもつながります。なお当構法の基本的なアイデアはイギリス人建築家・John Barrと共同で2003年度日本建築学会技術部門設計競技において入選したもので、その後、京都大学小林正美研究室(地球環境学堂)やトリスミ集成材、桃李舎(設計事務所)と共同研究で構造実験や建方実験を含む諸検討を経てモデル建物の建設に至りました。 |
 |
 |
 |
 |
| 写真−1 平屋モデル(京都大学北部構内実験棟) |
 |
写真−2 2階建モデル(京都大学和歌山研究棟) |
|
 |
| ■建物の用途とモデュール |
| j.Podの開発にあたって想定している建築物はあらゆる用途にわたります。基本的なモデュールは材料どりの合理化と下地材の間隔を考慮して455mmとし、1ユニットは人が内部で居住することを前提として標準寸法を内法スパン3,640mm、内法高さ2,730mm、奥行き2,730mmとしました。これは和室6畳の広さに相当します。ただしユニットの内法スパンは用途に応じて縮小・拡大が可能で、リブフレームとしての標準部材(38×184mm)を適宜組み合わせることで1,820mmから7,280mmのスパンまで対応できます。 |
 |
 |
| 写真−1 J.Podを用いた集合住宅イメージ |
|
 |
| ■構法の概要 |
| j.Podは図−2の製作プロセスの手順で造られます。もっとも大切な要素は工場製作による木製プレハブのリブフレームであり、釘が貫通する薄い鋼板を用いて剛接合のフレームを作ります。工場製作されたフレームはトラックで現地に運搬し(写真−3)、その四隅にスチールのコーナーアングルを用いてボルトで定間隔に連結することによってユニットを形成します(写真−4)。さらに水平構面と鉛直構面に構造用合板または鉄筋ブレースを配してモノコックユニットとなります。各ユニットはコーナーアングルどうしを端部でボルト結合することで建物の構造体を形成します(図−2)。1ユニットの重量は1ton程度なので小型の重機があれば建方が容易にできます(写真−5)。 |
 |
 |
| 図−2 J.Podの製作プロセス |
|
 |
 |
 |
 |
 |
| 写真−3 工場から現地に到着したリブフレーム |
 |
写真−4 リブフレームの組立作業 |
|
写真−5 j.Podの建方 |
|
 |
| ■j.Podの建築計画 |
| 標準のリブフレームは75mm×180mmの断面ですが455mm間隔で床・壁・天井の四面に回っています。フレーム方向は壁が不要なので開放感のある空間が得られ、構造検討に応じて壁面に窓や扉などの開口を設けることもできます。Pod間の界壁や上下階間は18cmの2倍の厚みとなり、この間に断熱材や防音材、設備配管などを配して居室の環境性能を確保できるようにしました。またPodどうしの連結には防振ゴムあるいは粘弾性ダンパーを用いることで個体音の伝搬を防止します。耐火性能は法的な制限を満足する外壁や内壁、床や天井の材料を建物ごとに選択します。現在のj.Pod標準部材では3階建てまでの低層建築を対象としていますが(図−1)、大規模の建物では鉄筋コンクリート壁や鉄骨フレームと組み合わせた多彩な計画が可能です。 |
 |
| ■j.Podの将来展望 |
j.Podのリブフレームにはベイマツの汎用製材を用いていますが、小型の部材を用いる構法なので各地域で産出される地場材料の導入が可能です。そういった問い合わせがいくつかの行政機関から寄せられています。また施工法が単純なので短い工期で済むことから、災害時の仮設住宅などへの要望もあります。
j.Podは新しい木造建築の構法ですが、建築基準法に規定された材料を用いるので法的な制限は通常の木造建築と何ら変わりません。今後はさまざまな建築への可能性を追求するとともに、良質かつ低コストの構法として広範囲に普及するよう、j.Pod建築の設計施工に関わる仕様書等を整備する予定です。 |
 |